同じネタで3日めです。外国人労働者問題を雇用保険法に書き込むこと自体は、それほど問題はないと考えるのがあるいは自然なのかもしれません。実際、日系人労働者のように深刻な実態が一部にすでに存在する問題もありますし、結局のところはこれをもとにどのように施策が具体化するか、によるからです。
ただ、今回の雇用対策法の改正では、目的規定も一部見直して、具体的には人口減少社会の到来をふまえて「労働力確保」の観点も入れ込む、という提案がされています。いっぽうで、外国人労働者受け入れについての政府の基本姿勢である「高度人材は積極的に受け入れ、単純労働者は受け入れないのが原則」は踏襲するという説明もされています。そこの整合性は大丈夫なのだろうか、という問題です。
要するに、雇用対策法に外国人労働者問題を書き込むとして、それはどのような問題意識から入れるのか。「厳しい状況にある外国人の雇用情勢を改善する(たとえば、外国人の失業率が高いからそれを下げるとか)」という外国人の福祉の向上のために入れるのか、「高度人材は不足しており、積極的に外国人を受け入れたいのに、現実はあまり受け入れられていないから、なんらかの措置を講じる」という労働力不足対策の観点から入れるのか、「外国人労働者が存在することで日本人の雇用情勢が悪化しているので、外国人受け入れを制限するための措置を講じる」という失業対策の観点から入れるのか、という議論です。しかし、外国人の雇用情勢の改善をわが国の政策として実施するのかどうか、コンセンサスはあるのでしょうか(あるのかも)。さらに、日本の労働市場の現状をみれば、外国人の高度人材が本当にそれほど必要とされているかといえば、実はそうでもありません。いっぽうで、現実に強いニーズがあるのは、比較的低廉なコストで就労環境の悪い仕事に従事する外国人です。政府の見解と労働市場の実態にこれほどの乖離がある中で、雇用対策法に外国人労働を書き込むというのはいささか時期尚早、議論の整理が不足しているとの感もあります。
まあ、外国人労働を必要としている仕事というのは、いわゆる3K職場のような良好でない雇用機会であり、こうした仕事については、自動化などで減らしていくべきところ、外国人労働の存在がそうした改善を阻害しているという見方はあるでしょう。就労環境改善のための投資を行い、さらには賃金も引き上げることによって、日本人のための良好な雇用機会に転換していけば、日本人の雇用情勢も改善するという考え方もあるでしょう。問題は具体的政策なのであって、単に項目だけ書くなら問題はないと考えておけばいいのかもしれません。しかし、他の項目、たとえば若年、女性、高齢者などは、「厳しい雇用情勢にあるところを改善し、もって労働力不足対策とする」ということで一応筋は通っていると思うのですが、外国人についてはそうした理屈が必ずしも一貫しないところがどうも気になります。