JILPT労働政策フォーラム

昨日(7月5日)、都内で開催されたJILPTの労働政策フォーラムを聴講してきました。テーマは「未来を拓く雇用戦略−30代社員が挑戦する仕事の世界−」というもの。
フォーラムの前半は鈴木宏昌早稲田大学商学部教授による問題提起、樋口美雄慶応大学商学部教授による基調講演、松淵厚樹労働政策研究・研修機構前主任研究員による報告で構成されており、結論としてはJILPTが最近発表した「雇用戦略中間報告」のピーアールにつながっているということのようです。ちなみにその概要はこんな感じです。

・雇用戦略の基本理念は、「人」をあらゆる政策の中心とし、生活の維持と能力の向上・発揮ができる活力ある社会をつくること。
・そのための3本の柱として以下がある。

  1. 就業促進を基盤とした全員参加型社会
  2. 就業の質の確保と就業インセンティブの向上
  3. キャリア権を基軸としたキャリア形成支援

後半は民間企業の30代社員4人とJILPTの30代研究員によるパネルで、コーディネータは諏訪康雄法政大学教授でした。で、聞いてみると実は前半と後半の脈絡はほとんどなく、テーマが「未来を拓く雇用戦略−30代社員が挑戦する仕事の世界−」となっているのは、前半のテーマが「未来を拓く雇用戦略」、後半のテーマが「30代社員が挑戦する仕事の世界」ということなのかな、という感じでした。
さて、このパネルで興味深かったことは、4人の民間人は男女2人ずつ、1人は転職経験者、1人は育休経験者、業種業界もバラバラと、かなりバラエティ豊かなメンバーだったにもかかわらず、その話す内容は相当程度共通していたという点です(まあ、当然ながらディテールの違いはあるわけですが)。
たとえば、最初に全員がひととおり話した「これまでのキャリアと現在のキャリア」についていえば、「そのときの能力を上回る仕事を与えられ、それにチャレンジすることを繰り返して能力を高めてきた」という基本パターンに全員はまっていました。もちろん、仕事の具体的な内容はそれぞれ違うわけですが。
また、「これからのキャリア、夢と希望」については、まだ30代という若さであり、しかも各社で高い評価を受けて順調にキャリアを伸ばしている人(こういうところに出てくるのはそういう人だろうと思うのですが)なので、やはり4人とも「これまでのように、チャレンジしがいのある仕事に取り組むことを通じて成長していきたい」というのが共通した基本パターンでした。そのうえで、専門性を追求するのか、企業・グループ全体を鳥瞰していくのか、後進に対するロールモデルになるのか、といったディテールの違いはありました。
あるいは、ワーク・ライフ・バランスについても、全員が「追求したい」との意志を示し、その手段も「仕事は集中して効率的にこなし、うまく時間をつくって家庭、生活にあてたい」というものでした。あるいは、「若いうちはやりたい仕事、能力を生かせる仕事といったことにあまりこだわらないほうがいい」「仕事においてはチームワークが大切」など、各パネラーに非常に共通する部分の多いパネルだったように思います。
もちろん、これはたまたまそういう人ばかりが集まったのだからこうなったのだ、と考えるべきでしょうし、違った考え方の人も多いのではないかと思いますが、転職成功者が自慢話を並べるようなキャリアセミナーと違って、地に足のついた現実的なディスカッションではなかったかと思います。