長期投資家の育成

今朝の日経新聞「経済教室」では、産業再生機構専務の冨山和彦氏が企業統治に関する論考を寄せられています。
冨山氏は、これからの企業は実物資本ではなく人的資本がカギを握るとしたうえで、「株主のカネのおかげで収益を上げている実感も実態もないのに、企業価値の中長期的な持続的向上には無関心の株主が、やれ手元現金を取り崩せ、配当を増やせと叫び、最後にはM&Aのように企業の生死さえ決める権限を持つ。経営者と従業員が共通の理不尽感、不条理感をもつのはある意味、時代の必然なのだ」と述べます。そして「より本質的な問題として残るのが実物資本(カネ)と人的資本(ヒト)との間における「時間軸」の不一致である」と指摘しています。
そして、これを解消するためには「たとえば、短期保有株主の企業統治への関与を制限する手もある」ものの「多くの技術的な障害が想像される」としてこれを却下し、「結局、最も根本的な解は、リスクをいとわず会社の長期的、持続的な収益拡大を忍耐強く見守り続けるような投資家の蓄積を根気よく行い、彼らの投資・統治が中長期的には企業価値の向上により有効に機能し、投資利回りも極大化することを実証していくことではないか」と結論づけています。
まことに正論ではあると思うのですが、それではどうすればそれが実現できるのかが悩ましいところです。株式が市場で取引され、価格が変動する以上は、短期的な取引で利ざやを稼ごうとする投機家が一定程度出現することは避けがたいのではないでしょうか。まあ、株式を取得したらある程度長期間の保有を義務付けるといった方法は考えられなくもありませんが、やはり無理があるような気がします。
要するに投機家に企業経営に有害な干渉を行わせないようにすればいいわけなので、やはり「売買は自由だが、長期保有しなければ経営には干渉できない」といった制約を設けるのが現実的なのではないでしょうか。たしかに、冨山氏のいうように、いろいろと技術的な課題はあるでしょうが…。