社内報で組織活性化

 今日の日経産業新聞に、社内報を組織の活性化に活用している企業の事例が紹介されていました。

 社内報を組織の活性化に役立てる動きが広がっている。多くの社員に編集を担当させて経営の視点を養ったり、仕事の苦労が社員の家族に伝わるようにして士気向上を狙う例もある。企業内の情報伝達手段として社内メールが定着するなか、紙媒体ならではの良さを生かした社内報の活用術をまとめた。
 「自分の部署だけでなく、会社全体のことを考えるようになった」。建築用防水材製造大手の田島ルーフィング(東京・足立、田島国雄社長)の綿引友彦・営業企画室係長は、社内報の編集に携わるようになってからこう感じている。
 同社は1964年に社内報を創刊して以来、編集作業は社員が持ち回りで担当する。総務や営業、生産など社内各部署から集まった11人の社員が社内報を2カ月ごとに作る。任期は原則2年。綿引係長は「会社の公的な資料になるので、経営の視点を意識しながら作っている」と語る。社内報の業務は通常業務との兼務。…編集担当者の一人である水山彰・総務部課長代理は「自社の良さや改善点を考えるきっかけになっている」と話す。
(平成18年4月6日付日経産業新聞から)

さて、お読みのみなさんの会社の社内報はどうでしょうか?面白いでしょうか?読まれているでしょうか?


一口に社内報といっても、小規模な会社では社長自らが所感や訓示をワープロ打ちしただけのものであったり、いっぽうで大企業ではカラー印刷で数十ページにもおよぶような立派なものを作っているケースも多いようです。元リクルートの「社内報の神様」福西七重氏は、「企業経営の中枢神経をつかさどるのが社内誌である」と云っているそうですが、たしかに中小企業では経営者がその時々にどんなことを考えているのかを全員が知ることができるということは大きな効果でしょう(もっとも、社長の独り善がりのお説教が載っているだけでは誰も読まないかもしれませんが、そういう社長に限って読んでいないと怒ったりしそうですが…)。逆に大企業では、他の職場や会社全体でなにが起こっているのかが日常的にはわからないことも多いでしょうから、社内情報源として貴重かもしれません。記事では、日本経団連社内広報センター長の唐沢清氏の「重要なことは繰り返し伝えなければ浸透しない。ネットで配信して終わりにするのでなく、詳細を社内報で伝えることで重要な情報が社内の隅々に行き渡る。IT(情報技術)の普及で社内報廃刊を考えた企業もあったようだが、大半の経営者は思いとどまった。現に日本経団連の調査では全体の85.1%の企業が社内報を発行している。」というコメントが紹介されていますが、そのとおりだろうと思います。
また、人によっては仕入先や納入先、グループ会社や親会社の社内報も読んでいる人もいるでしょうから(私自身も、自分が読んでいない社内報の記事を取引先の人が読んでいて恥ずかしかった、という経験談を聞いたことがあります)、必ずしも社内に限らない浸透力も期待できるかもしれません。
ただ、社内報がそうした機能を果たすためには、読まれなければ仕方がないわけで、そのためには社員の関心をひきつける編集が不可欠でしょう。前出の日本経団連企業広報センターでは定期的に社内報セミナーを開催してノウハウを教授しているそうですし、やはり前出の副西七重氏が経営する会社では、社内報編集の請負と同時に、読者の関心をひく情報・材料などをタイムリーに紹介する情報誌を発行しているそうです。
とはいえ、面白いところだけつまみ食いされて、伝えたいところを飛ばされてしまったのでは仕方ないわけで、そこをどう読ませるかというのはなかなか難しいところかもしれません。もっとも、基本的には自分の働く会社のことですから、関心がないということはないでしょうが…。
その点、この記事にある田島ルーフィングの取り組みは、「読まれる」ためのくふうとしても有意義かもしれません。なにより、自分自身が編集に携わった経験があれば、編集者がいかに面白い、読まれる社内報を作ろうと努力しているかよくわかっているでしょうから、自分の編集したものと引き比べながらしっかり読むでしょう。それがよりよい編集をめざす競争を活性化させることは想像に難くありません。
また、500人の会社で11人ですから、ほとんどの人が編集者の誰かは知っているでしょうから、そういう面でも関心を持って読まれるのではないでしょうか。
社内報は手軽な社内コミュニケーションツールですが、作る以上はうまく使うという知恵が大切なのかもしれません。