フリーアドレス

 日立製作所は4月以降、社員の座席を固定せず自由な席で仕事ができる「フリーアドレス制」を本格導入する。情報・通信グループの1万5千人を対象に順次実施、他の事業部での導入も検討する。組織の壁を超えた仕事をしやすくすることやオフィス経費の削減などが狙い。1万人以上の規模のフリーアドレス制導入は日立が初めて。
 社員は営業や開発など自ら所属する組織を超え、取り組む事業ごとなど仕事の内容に沿って座る。出社すると専用ロッカーにしまってある業務用ノートパソコンを座席に置き、電話も卓上にある機器に本人のIDを打ちこんで利用する仕組み。

 社内の書類の全面的な電子化を進め、「ペーパーレス」を進めたことも“自由座席”制を後押しした。書類は社内の共有サーバーに電子データとして保存、どの席に座っても取り出せるため、社員は自分の書類などを持ち運びしなくて済む。
(平成18年3月21日付日本経済新聞朝刊から、以下同じ)

なるほど、これは便利そうです。IT革命の成果というところでしょうか。
ただ、実際にやるとなると、混乱もけっこう大きそうな気はします。指定席にしないとみんな便利なところに集まりますから、混雑するところと空いているところができて、実際には人数分を相当上回る席を準備しなければならないのではないでしょうか。
また、指定席の場合は配席は業務の関係だけではなく、人材育成なども考慮して決めるわけで(たとえば新人の隣にベテランを配置して指導役とするとか)、そうした面に影響が出ないかという問題もありそうです。
あるいは、人間関係が完璧ならいいのですが、実際にはやはり嫌な管理職の近くには誰も座りたがらないとか、職場内の派閥ができやすくなるとかいったことも心配といえば心配です。
まあ、やってみれば結局のところはなんとなく部署ごとにゾーンが決まってきて、同じようなところに座るようになるのでしょう。そういう緩やかな枠組みの中で、「今日はあの職場の彼と相談しながら進めよう」と端末を持って行くことができる、という活用をするならたしかに便利そうです。