雇用促進住宅廃止へ

去年の夏ごろ、雇用促進住宅に職安所長が入居していたことが発覚して問題になりました。まあ、空いているのだから固いことを云わなくても、ということだったのでしょうが、そもそも公務員は雇用保険の被保険者ではないので入居資格がないのに、あろうことか職安所長が入居していたというのはさすがに問題でしょう。その雇用促進住宅ですが、週末の日経新聞に、ひっそりとこんな記事が出ていました。

 政府は25日、独立行政法人雇用・能力開発機構が運営する「雇用促進住宅」を数年内に廃止する方針を固めた。住宅の多くが老朽化しているほか、入居対象者である転職者の需要が減っていることに対応。民間への売却を進め、資産の有効活用を図る。3月に閣議決定する規制改革・民間開放推進3カ年計画に盛り込む。
 雇用促進住宅は職業安定を図る転職者や低所得者向けの一時的な住居として、民間企業が納める雇用保険料で設置・運営してきた。昨年9月時点で全国の約1500カ所に13万5619戸あり、約35万人が入居している。ただ入居対象の転職者が一般の公営や民間の賃貸住宅を希望するケースが増えたほか、老朽化で空室率は約2割に達している。
(平成18年2月25日付日本経済新聞夕刊から)


実は雇用促進住宅の廃止自体はたしか2001年(自信なし)に決まっていて、厚生労働省が実に30年(!)かけて譲渡または廃止するという計画を作っていたと思います。実際、規制改革会議の資料によれば、平成11年末に1,521住宅・3,857棟・144,544戸あったものが、昨年6月末までの5年半で1,534住宅・3,855棟・142,365戸に減っただけというのですから、この調子では全廃するまで30年どころか300年はかかる計算です(記事をみるとその後も一応減少してはいるようですが)。
厚生労働省としては、現に居住者がいるのだからそうそう簡単には廃止できないという理屈のようで、それならたしかにまだ居住者が多く、若い現時点ではなかなか廃止が進まないというのも一応一理はあるでしょう。安価で売却すると「投げ売り」批判を受けるという事情もあるかもしれません。あるいは、住宅の管理などにあたっている職員の雇用問題も当然あるでしょう。
とはいえ、そもそも雇用促進住宅の入居年限は2年(転居して就職し、別の住居を見つけるまでということでしょう)のはずで、いかに既得権化しているとはいえ、それなりに努力すれば退去も進められるのではないでしょうか。しかも、依然として入居者の募集を行っているというのですから理解に苦しみます。およそやる気があるとは思えず、いかにお役所の仕事をやめさせるのが難しいかがわかります。
雇用促進住宅は、たしかに失業者が転居をともなう再就職をするときの住宅対策としては有効だったでしょうが、最近では、雇用促進住宅に居住する労働者が失業すると、その家賃があまりに安すぎるのでかえって転居できず、再就職の妨げになっている例もあると聞きます。その維持費が年間300億円を超えるという話もあります。投げ売りしたって維持費の分は雇用保険会計が助かる計算になります。雇用保険は財政が厳しく、ここ数年の間にも保険料率を上げたり給付をカットしたりしていますから、今度こそ雇用促進住宅の整理が進むことを期待したいものです。