共働き職員「給料2割削減」

それにしてもこれはかなり驚きました。きのう(7日)の読売新聞夕刊から。

 大分県日田市の大石昭忠市長は7日、夫婦や親子がいずれも市職員で、同居している場合、それぞれの給料を2年間、2割削減する条例案を、27日開会予定の市議会定例会に提案すると発表した。厳しい財政事情を解消する一環と説明しているが、組合側は「差別的だ」と猛反発している。…
 全市職員738人のうち、対象は33組(いずれも夫婦)で、年間5225万円の経費削減となる。
(平成18年2月7日付読売新聞夕刊から)

まずは労組に対し共働き職員の「自主的な2割返上」を求め、拒絶されたことから「条例改正案を提案、議会に判断を委ねることにした」のだそうです。


まあ、自発的な返上であれば、それは「自発的」なのだからいいのでしょう。しかし、条例でやるとなると…市職は「法の下の平等に反する」「結婚差別にもつながりかねず、議論の余地はない」と主張しているそうですが、そのとおりだろうと思います。総務省も「給与は職務と責任に応ずるものでなければならず、条例案内容によっては地方公務員法に照らして問題になりうる」との見解だそうですが、これまた法律上の職務給主義からはそうなるのが当然でしょう(もっとも、地方公務員の給与についてはいわゆる「わたり」が横行するなど、職務給主義からの逸脱が常態化していますから、総務省の指摘も若干説得力を欠く感はありますが)。このあたりは、市長も市当局も当然承知しているでしょうから、それにもかかわらず、あえて議会にはかろうというのはいささか不可解です。
こういう発想が出てくるのは、要するに実態としては職員の給与が職務給ではなく、生計費で決まっているからなのでしょう。昔ながらの「夫婦子2人の生計費」といったような発想で賃金が決まっているのならば、夫婦共稼ぎであればたしかに生計費部分は二重取りしているということになるわけで、その分は返上してくれてもいいじゃないか、ということにもなるかもしれません。で、2割カット、ということは一人分の4割で、生計費反映部分は(少なくとも)給与の4割はある…というのが実情ということなのでしょうか。それに加えて、住民感情としての「共働き公務員批判」も無視できないということもあるかもしれません。
とはいえ、共働き夫婦を狙い撃ちにするのはやはり筋が悪いわけで、だったらいっそのこと、夫婦子2人の生計費配慮部分が4割あるけれど、いまや共働きが当たり前の時代なのだから、生計費配慮部分も半分でいいはずだ、という理屈で、全員の給与を2割カットしたほうが筋が通っている(まあ、非常に乱暴ではありますが)ということになるかもしれません。そのほうが、市の財政への貢献度も大きいでしょうし。
ところで、例によって(笑)33組で2割カットして年間5225万円の削減効果、ということで荒っぽく計算してみると、年収は夫婦で約800万円という結果になりました(給与以外の法定福利費なども考慮すれば実際はもっと低いでしょう)。地場の相場と比較してどうなのかはわかりませんが、とりあえず「共働き公務員批判」でよく引き合いに出されるような「夫婦で年収1500万円、退職金6000万円」というような水準ではなさそうです。