ライブドアとリクルート

リクルート会長の江副浩正氏が、朝日新聞リクルート事件ライブドア事件を同一視する記事を掲載したことに対し、名誉毀損の訴えを起こしたそうです。

 ライブドアの事件に絡み「リクルート事件二重写し」などと報じられ名誉を棄損されたとして、江副浩正・元リクルート会長が26日、記事を掲載した朝日新聞社に200万円の賠償を求め東京地裁に提訴した。
 訴状によると、朝日新聞は26日付朝刊で「虚飾 ホリエモン逮捕 下」という記事を掲載。「リクルート事件二重写し」「カネのにおい 突進の果て」などの見出しで、江副元会長がライブドア関係者と同様に金のためには手段を選ばない虚業を推し進めていたかのように報道され、名誉を傷つけられたとしている。
 朝日新聞社広報部は「訴状をよく読んで対応を検討する」としている。
(平成18年1月27日付日経新聞朝刊から)

掲載された当日に提訴するとはよほど腹にすえかねたのでしょうが、逆鱗に触れた朝日の記事はこういうものです。

 「新興企業には、『成長の強迫観念』がある」
 リクルート出身で、「リスク・ヘッジ」代表の田中辰巳さん(52)は言う。
 江副浩正元会長が、政治家や官僚に未公開株を譲渡して逮捕されたのは89年。就職情報誌などが頭打ちになっていた。
 「立ち止まることは死を意味する」
 事件前、秘書課長だった田中さんは、江副氏が会議の度にそう繰り返していたのを覚えている。
 不動産や電話回線の再販などへ次々と手を広げ、江副氏のスケジュール帳には、毎週のように政治家との会食が組まれるようになった。
 「情報産業じゃなかったのか」
 リクルートは、「地上げ屋」と批判されたが、空前の土地ブームに人々は踊った。
 ライブドアは、規制緩和ベンチャー育成の機運に乗り、株式市場は沸き立った。
 「映画のリメーク版を見ているようだ」
 田中さんには、二つの事件がダブって見えた。
(平成18年1月26日付朝日新聞朝刊)

ライブドアは自社株の価格を不正な手段でつり上げて利益を得たわけですが、リクルートコスモス事件は未公開株を政治家などに譲渡し、上場時に儲けさせたというものです。もちろんどちらも悪事ではありますが、たしかに「株がらみ」である以外はあまり似ていません。ライブドアリクルートについても、「資産価格の異常な上昇で稼いだ」というところは共通していますが、リクルートは不正手段で地価を上げたわけではありません。
リクルート虚業でなかったかどうかは議論があると思いますが(笑)、たしかに「二重写し」とはちょっと言えないような気がします。江副氏の怒りがもっともかどうかは別として、朝日新聞の記事はいかにもずさんなように思います。