閉店法

今朝の日経新聞にこんな記事が出ていました。

 サッカーのワールドカップ(W杯)を開催するドイツの各州が6−7月の期間中、小売店の営業時間を制限する「閉店法」を緩和する見通しとなった。世界各国から来るファンのニーズに応える。試合会場の12都市を中心に、期間中は日曜や深夜の営業も例外的に認める。
 ドイツでは約50年前に制定した連邦の閉店法で、月曜から土曜の営業は午後8時まで。キリスト教安息日の日曜や祝日は、駅の売店やガソリンスタンドを除いて営業が認められていない。
…労組や教会は日曜や深夜の労働に反対しているが、W杯をきっかけに閉店法緩和を巡る論議も強まりそうだ。
(平成18年1月11日付日本経済新聞朝刊から)

365日、24時間営業が当たり前の今の日本ではちょっと考えられない話です。


もう少し詳しく書くと、「約50年前に制定した連邦の閉店法」(1956年制定)では、開店時間は平日午後6時半まで(木曜のみ8時半まで)、土曜は午後2時まで(第1土曜のみ午後4時まで)、日曜・祝日は開店禁止、ということになっていたようです。さすがにこれはあまりにも不便(土曜の閉店間際の混雑はすさまじかったらしい)ということで、1996年に法改正が行われ、翌97年からは月曜から金曜までは午後8時まで、土曜は午後4時まで、クリスマス前4週間の土曜日は午後6時まで、日曜は開店禁止となったとのことです。さらに2003年には土曜日も午後8時までとする法改正が成立して現在に至っているようです。ちなみに閉店法の目的は労働者の余暇の確保ということのようですが、現実には大型店の営業時間延長を規制することで中小商店の保護政策ともなっているという側面もあるとのことです。
日本人(特に都市居住者)の常識からすればいかにも不便な話(ドイツでも、消費者の圧倒的多数は規制緩和に賛成とか)ですが、だからこそドイツの短い労働時間が可能になっているという面もあるのでしょう。逆に日本の場合は、コンビニが24時間営業して、経営を成り立たせていくためには、低賃金のアルバイトが必要なだけではなく、最近よくその労働条件の劣悪さが紹介されるトラック運転手の長時間労働なども必要になるわけで、国民が消費者として利便性を謳歌するために、労働者としては長時間労働を余儀なくされるという構図になっているのではないでしょうか(もちろん、人によって前者にウェイトのかかるハッピーな人もいれば、後者にウェイトのかかった厳しい状況の人もいるでしょう)。長時間労働ゆえに長時間サービスが必要となる、ということも考えられます。まあどちらもあるのでしょう。
まあ、働く時間を短くしたいなら、その分便利さとか、豊かさがトレードオフになりますよという、いたった当たり前の話ではあるのですが・・・しかし、少子化問題なんかにも似たような構図があるような。わかっちゃいても、なかなか利便性の水準を下げるというのは受け入れにくいものなのだろうという気もします。