ワタミ、定休日を設定

あまり使わないタグですが、まず目をひいたのがこのニュースです。

 ワタミの社長に3月1日付で就任する清水邦晃常務(44)は22日、日本経済新聞の取材に対し「世間の『ブラック企業』との批判を真正面から受け止める必要がある」と述べた。居酒屋に定休日を設定するなど、労働環境改善を最優先し業績回復につなげる考えだ。
 同社は業績が悪化しており、2015年3月期は2期連続の最終赤字になる見通し。清水氏は過酷な労働環境の「ブラック」イメージは、居酒屋の客数減や介護施設の入居率の低下、食事宅配の販売数の伸び悩みにつながったと分析。イメージの回復へ「残業削減や休日取得も徹底してきちんとした普通の会社にする」と表明した。
 2月以降に、「和民」など運営する居酒屋の3分の2の店に定休日を設ける。現在は年中無休がほとんどだ。比較的客が少ない月曜日を中心に毎週、隔週などの頻度で休みをつくる。調理に手間がかかりすぎないようメニューを変え「従業員が余裕を持って調理や接客ができるようにする」。
 営業面の立て直し策では3月以降、料理と価格を見直し、主力の「和民」の顧客1人当たりの支払額を現在より1割弱安い2500円前後に下げる。手ごろな価格で多様な料理やお酒を出して、20〜30代を呼び戻す考え。管理部門のコスト削減も併せて進め「16年3月期は黒字化を目指す」と述べた。
平成27年1月23日付日本経済新聞朝刊から)

低価格・デフレ路線が相変わらずなのは気になりますが、定休日を設定するというのは注目すべき取り組みだろうと思います。人材確保もさることながら、休業は人件費だけでなく用役費なども大幅に少なくてすむのでコストダウン対策としても効果的なので、業績改善への貢献も大きいことが期待できるからです。その業績改善が労働条件の改善に結びつく好循環を期待したいところです。
余計なお世話ながら思いつきを申し上げれば深夜営業も見直しの余地があるのではないでしょうか。もちろん深夜時間帯シフトは客数に応じて人員も減らしているのだろうとは思うのですが、上記のように店を開けているかぎりかかる固定費というものもあります。特に近場にのれん分けの「わたみん家」とかがあるのであれば、和民は25時に閉店してそれ以降はそちらに誘導するとかいう営業もあろうかと思います。あるいは深夜料金という手もあるでしょう。
要するに客の少ない時間に店を開けているから非効率だといういたって単純な話であり、生産性を上げることで労働条件を改善するには消費者が利便性の低下を受容することが必要といういつもの話になるわけです。大陸欧州では小売店は日曜全休、平日も19時かせいぜい20時には閉店するのがまあ当たり前であり、飲食店には休日規制はかからないもののランチとディナーの間は閉店することが多い(これは日本でも見かける)ですし、さすがに朝5時まで開けてますなんて店はごくまれでしょう。当然ながら消費者は短い開店時間に集中するわけで効率は良く、消費者が不便な分生産性が高いわけですね。逆に言えば深夜2時に280円の牛丼を提供するにはワンオペが必要になるという話でもあります。
さてこうした定休日設定や開店時間短縮は当然ながら業界あげて取り組めばさらに効果的であるわけで、たとえば調布駅前に多数ある居酒屋がすべて毎日営業する必要はなく、来店者数にあわせてたとえば半分の店は月曜日定休、2割の店は火曜日定休…といった具合で協調して定休日を設定するというのは基本的に誰も損をしない話ではないかと思います(まあ私が行きたかったあの店がたまたま休みだった、という話はあるでしょうが)。毎年定休日をローテーションすれば公平性も保てるのではないかと思います。公取もこうした休日確保や労働時間短縮のための取り組みは参加者にそれを強制しないかぎり独禁法違反にはならないとの見解のようであり、日本フードサービス協会とフード連合あたりが労使で音頭をとって取り組むというのは難しい話なのでしょうか。表だっては言えないでしょうしいいというつもりもありませんが事実上の競争抑制策にもなるわけですし。まあ現実には盛り場単位くらいでやる話になるでしょうからそれを仕切れるだけのリーダーと組織が必要であって往々にして反社会的勢力が入り込んでくるとかいった問題はあるいはあるのかもしれず、そうそう簡単な話ではないのかもしれませんが…。