バカの上塗り

一昨日のエントリで取り上げた日経新聞が実施した賃金制度の調査ですが、日経はきのう、きょうとミニ特集を組みました。これがまた、ひどい内容で。

成果主義を見直すと答えた企業も、実態は内容の改善を目指しており、成果主義を強化する流れは加速している。
 回答企業の3.3%、17社が「成果主義型賃金制度そのものの見直し」を過去一年間に実施している。ただ、中身を見ると、成果主義を廃止したり、過去の年功序列型賃金制度の要素を加味すると答えた企業は一つもなかった。ほとんどの企業は成果主義をより徹底し、より効果が出るための内容変更見直しと位置づけている。
 成果主義見直しの具体策としては、プロセス評価の加味が最も多かった。努力しても成果が出るのに時間がかかったり、外部要因に邪魔されて結果が出ない場合でも、過程を評価することで公平性を保つ。企業理念に沿った行動の評価とコンピテンシー(行動特性)を加味するのも、社員の姿勢も重視し、やる気を高めることを意図する。
(平成17年5月20日日本経済新聞朝刊から)

これはまさしく恥の上塗り、バカの上塗り。よしときゃいいのにねぇ。


だいたい、「成果主義を廃止」だの「『過去の』年功序列型賃金制度の要素を加味」だのと聞かれたら、そうだと答える企業はないに決まっています。しかし、「プロセス評価の加味」ってのは、事実上は成果主義の後退なんです。そりゃそうですよね、「プロセスではなく成果を評価する」ってのが成果主義金科玉条だったんですから。「いくら頑張っても、能力があっても、成果を上げなきゃダメですよ」ってのが成果主義なんでしょ。そこに「プロセス」だの「外部要因」だのを入れることは、明らかに成果主義の後退なんであって、「成果主義の徹底」とは正反対なんです。コンピテンシーも同じことで、そもそもコンピテンシーというのはだいたい「成果につながりやすい行動特性」くらいのもので、正確な定義はコンサルタントにでも聞いてもらうとして、少なくとも成果そのものとは異なるもののはずです。
自分でも書いているじゃないですか、「社員の姿勢も重視し、やる気を高める」って。成果ばかり重視すればやる気が出るってものじゃなくて、過程や姿勢も重視することがやる気につながるんです。「より効果が出るための内容変更見直し」ってのは、事実上成果主義を後退させるということなのです。
なんか単純な間違いが多すぎますね。そういえば、18日の記事でも、「職務給など成果主義型の制度」とか平気で書いてるし。職務給というのは「職務」で給料が決まるのであって、純粋な職務給なら「成果」がどうであれ「職務」が同じなら給料も同じのはずですから、「成果主義型」でもなんでもない(ま、「型」というところに退路は確保しているのかもしれませんが)。日経はこの手の話はデタラメだらけだな。デタラメだらけでは全然ダメに決まってます。デタダラのゼンダメだ(笑)。
こんなこと、なにも学者やコンサルに取材するまでもなく、日経の人事部に言って担当者にちょっと聞いてみればわかることのはずなんですが。日経の人事部の人も、何もいわないのかしらん。日経の人は日経を読んでいないのだろうか(笑)