スウェーデンモデル@日経経済教室

昨日の日経新聞「経済教室」に、湯元健治日本総研理事がスウェーデンモデルの記事を寄稿されています。
ほとんどは事実関係の説明に費やされていて、内容的には内閣府イェーテボリ大大学院の佐藤吉宗氏から実施したヒヤリングによっているとのこと。ちなみにこの佐藤氏のブログがあり、現地事情を知る上で役に立ちます。
http://blog.goo.ne.jp/yoshi_swe
さて、この記事での湯元氏の結論はこうです。

スウェーデンは…小国にすぎず、そのモデルをストレートには適用できない。中福祉・低負担のわが国で、福祉や社会保障をさらに充実させ国民負担引き上げの理解を得るのは、容易ではない。一方で、労働市場をより柔軟にし、教育・訓練によって人材の質を高める構造改革は学ぶべきで、実行可能でもある。厳しい競争社会と社会保障や雇用の安心確保は決して相対立するものではないことを銘記すべきだ。
(平成21年9月17日付日本経済新聞朝刊「経済教室」から)

セーフティネットを充実させれば競争を制約する必要はない、というのは、もうかなり古くから構造改革屋さんたちの一種のドグマになってるみたいですが、やっぱり程度問題というものがあるように思います。「中福祉・低負担のわが国で、福祉や社会保障をさらに充実させ国民負担引き上げの理解を得」ずに、「労働市場をより柔軟にし、教育・訓練によって人材の質を高める構造改革」を行うという「いいとこ取り」が本当に成立可能なのかどうかは、私はかなり疑問に思うのですが。
あと、これはこのブログで繰り返し書いてきたことですが、この記事をみても、

…賃金体系は、連帯賃金政策と呼ばれる製作の下で企業の生産性格差にかかわらず同じ職種なら賃金が同じという「同一労働・同一賃金」が実現している。…平均より生産性の高い企業には超過利潤をもたらし高い国際競争力を生み出している。

ということで、基本的に企業のあげた利益は労働者には配分されないということのようです。まあ、国全体のマクロの業績は中央団体交渉を通じて反映されるのかもしれませんが。私などはそれでよく生産性が上がるものだと思うわけですが、非常に充実したセーフティネットを用意して、労働者を機械のように仕事のあるところにうまく動かすことで生産性を高めているということでしょうか。セーフティネットの財源は税なので、企業とすればたしかに生産性は高いかもしれません。

厚生労働副大臣に細川律夫氏

副大臣の名簿が報じられていました。

 政府は18日午前の閣議で、鳩山内閣副大臣22人を決定した。

 ▽内閣府 大島敦〈4〉(埼玉6)古川元久〈5〉(愛知2)大塚耕平〈2〉(参・愛知)▽総務 渡辺周〈5〉(静岡6)内藤正光〈2〉(参・比例)▽法務 加藤公一〈4〉(東京20)▽外務 武正公一〈4〉(埼玉1)福山哲郎〈2〉(参・京都)▽財務 野田佳彦〈5〉(千葉4)峰崎直樹〈3〉(参・北海道)▽文部科学 中川正春〈5〉(三重2)鈴木寛〈2〉(参・東京)▽厚生労働 細川律夫〈7〉(埼玉3)長浜博行〈1〉(参・千葉)▽農林水産 山田正彦〈5〉(長崎3)郡司彰〈2〉(参・茨城)▽経済産業 松下忠洋〈5〉(鹿児島3、国民新)増子輝彦〈1〉(参・福島)▽国土交通 辻元清美〈4〉(大阪10、社民)馬淵澄夫〈3〉(奈良1)▽環境 田島一成〈3〉(滋賀2)▽防衛 榛葉賀津也〈2〉(参・静岡)
(2009年9月18日11時10分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090918-OYT1T00378.htm

細川副大臣が労働、長浜副大臣が厚生という担当になりそうだということです。長浜氏は年金問題に熱心なようなので、長妻大臣と共闘するのでしょう。いっぽう、報道された発言などをみるかぎり、長妻大臣は官僚・官庁たたきと年金問題に関心が集中していて、労働問題にはあまり興味がなさそうなので、細川副大臣の出番は多そうです。
そこで細川副大臣ですが、人権派弁護士で旧社会党系、民主党ネクスト法相、とりあえず「日の丸・君が代」や外国人地方参政権問題などでは旧社会党全開だったという記憶があり、「うへえ」な感じがしますが、ご自身のウェブサイトで労働政策についてはこう「公約」しています。

7. 非正規労働者の使い捨てをなくし、働く人の生活と権利を守ります。
雇用の原則を、直接で期間の定めのない雇用とし、長期安定雇用を労働政策の基本とします。労働者派遣法の改正、有期労働契約の見直しなどにより、非正規労働者の削減と待遇改善を図ります。
http://www.hosokawa-ritsuo.jp/policy.html

思いのほかそれほど「うへえ」でもなく、とりあえず役所とはかなり方向性が一致していて、役所は案外胸をなでおろしているかもしれません。民主党マニフェストがあれほと連呼している「最低賃金」をあえてはずしたのであれば立派な見識と申せましょう(中小企業への影響のほうを優先しただけかもしれませんが)。「雇用の原則を、直接で期間の定めのない雇用とし、長期安定雇用を労働政策の基本とします。」というのは、原則・基本であって一定の柔軟性が確保されているのであれば経団連だって否定はしない、というか同意するでしょう。あとは、「一定の柔軟性」というのが「原則・基本」のために不可欠で重要だということ、「労働者派遣法の改正」や「有期労働契約の見直し」で「非正規労働者の削減と待遇改善」が実現するかといえば、話はそんな簡単なものじゃないってことを、連合あたりがしっかり説明して理解してもらってほしいと思います(とりあえず官僚の言うことは聞かないのでしょうから)。

長妻大臣、閣議に遅刻

まあ遅刻自体もよろしくないわけですが、これはいかがなものかと。

 長妻昭厚生労働相が18日午前の閣議に遅刻した。閣議の開始は予定より7分遅れた。閣議後の記者会見では冒頭に「遅刻して迷惑をかけた。二度と起きないようにしたい」と陳謝。遅刻の理由は「渋滞」で「都市部の若干はずれに住んでいるので渋滞の時間も勘案して(迎えの)車に来てもらうようにしたい」と語った。鳩山由紀夫首相や平野博文官房長官にも謝罪したという。 (12:33)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S1800N%2018092009&g=P3&d=20090918

大臣付の運転手が渋滞を計算していなかったなんていう言い訳が通用すると思っているのがそもそも問題ですが、こういうことを部下のせいにすると人はついてきませんぜ長妻センセイ。万一渋滞のせいであったとしても、「私が出発前にちょっと手間取ってしまって…」とか言うのが人望を集める上司というもの。十分条件ではありませんがかなりの程度必要条件だと思いますよ。まあ余計なお世話ですが。
(9月21日追記)長妻大臣は東京7区(中野区・渋谷区)選出で、事務所も中野区中野にあり、出身高校も長妻大臣のウェブサイトによれは「都立練馬高校卒業(中野区、練馬区、杉並区が学区)」とのことですから、まあ自宅もそのあたりなのでしょう。それが「都市部の若干はずれ」というのなら、武蔵野市調布市はどうしてくれるんだ、と言いたくなりますが、まあ大臣諸氏は赤坂とかに住んでるのが普通で、それに比べれば「若干はずれ」ということなのかもしれませんが、なんか実態以上に長距離という印象を与えようとしているという感は否めません。ちと意地悪でしょうかね。