昨年末に開催された「倉重公太朗の労働法実践塾出版記念シンポジウム」のダイジェストがYahoo!ニュースに掲載されておりました。私も中央大学客員教授の肩書で参加しております。
ポストコロナ時代の「働く」を考えよう(前編)
ポストコロナ時代の「働く」を考えよう(中編)
ポストコロナ時代の「働く」を考えよう(後編)
当日のテーマは「これからの「はたらく」を考えよう」だったのですが、昨今の情勢をふまえて目を引くタイトルに差し替えられていますね。なお一昨日にはすでに閲覧可能になっていたらしく、やはり登壇されたhamachan先生のブログでもさっそく紹介されていました(倉重さんの実践塾でわたしや労務屋さんが喋ったこと)。
内容についてはリンク先をぜひごらんいただきたいところですが、当日の登壇者(倉重先生含め7人)の中で民間企業で雇われている人は私ひとりであり(まあhamachan先生は機構からサラリーを貰っているとは思いますが)、残りの方は当日もhamachan先生が言っておられましたが「とってもキラキラした」キャリアの方々だったので、あえてそういう方面ではなく、起業とも独立ともあまり縁のない、しかし社会的には多数派を占めるであろう方々のキャリア、「これからの「はたらく」」を中心に発言してみました。正直つまらん奴だと思われたのではないかと思うのですが、まあそのあたりのバランサーとしての役割が期待されていたのだろうと。
さてhamachan先生は中高年に関する先生と私の議論をご紹介いただいていますが、実は他の登壇者からもこれに関係する興味深い発言がいくつか出ていたのでご紹介したいと思います。
パネルはまず最初にhamachan先生と私が「実は日本的な雇用システムは、普通の人が会社に身を委ねると、すごくうまく力を引き出して活躍させてくれるシステム」という話から始まったのですが、途中、日本マイクロソフトの澤円さん(株式会社円窓社長、「プレゼンの神様」という二つ名のほうが通りがいいかも)からこんな発言があり、
…固定された価値観を持ち続けるのは、マネジメントの問題がすごく大きいと思っています。日本は「管理職」という言葉を使うでしょう? 僕は大嫌いなのです。管理ってただのタスクではないですか。そういうのはAIにやらせればいいのです。マネジメントというのは、僕からすると対訳がありません。なので、マネジメントという概念がもう少し浸透すればいいなと思うのですけれども。
…日本って、名誉職としてマネジメントをやらせますよね。これがそもそもの間違いです。マネジメントは、それができる人、もしくは志している人で、なおかつ人格者であることが求められるべきだと思っています。
これを受けて、グローバルな研修事業の会社を経営しておられる豊田圭一さん(株式会社スパイスアップ・ジャパン代表取締役)が海外の実情をもとにこう述べられました。
…海外に駐在する日本人の一番のストレスは何かといったら、英語ができないことでも、外国人とうまく交流できないことでもなく、マネジメント経験がないことなのです。
…役職が付いていなくてマネジメント経験がない(引用者注:35歳くらいの)若手が初めて海外に駐在をすると、ポジションが2つぐらい上がっています。そのときに日本人は真面目ですから、「自分は初めての駐在でマネジメント経験もないので、一生懸命頑張りますので教えてください」と言うのです。向こうの人から言わせれば、「冗談じゃない」と思います。マネジャーとして初心者の若者がやって来る。でも35歳は向こうの感覚ではシニアなのですよ。カンボジアでは平均年齢が24歳です。フィリピンだってそうですし、インドは27歳です。そういう中で35歳の若手などあり得ないのです。でも日本は平均年齢が高いので、仕方がないですよ。
さらに転職エージェントの森本千賀子さん(株式会社morich代表取締役)はこの発言をダイバーシティ・女性活躍の観点からこう受け止められました。
めちゃくちゃ共感します。ぜひ、「前倒しキャリア」を推奨してほしいです。特に女性の出産前教育です。20代、30代、40代と私も過ごしてきましたが、一番時間が自由で、なおかつ知的好奇心と体力があるのはやはり20代です。そのときに思い切りいろいろな経験をさせてほしいのです。今所属している会社や組織の信頼預金残高をとことん高めていただきたいのです。
ということで、自覚的かどうかは別として、日本的な「遅い選抜、遅い昇進」に対しては明確に否定的で早期選抜を志向する見解が次々と示されました。これを受けて、hamachan先生と私が(hamachan先生のブログでも紹介されているように)日本企業の人事管理における「管理/マネジメントとはなにか」について発言するという流れだったわけですね。
でまあ結論的にはhamachan先生は途中明確に「普通の人が腐らずにいくにはどうしたらいいのか。その答えが、正直に言うとなくなりつつある」と率直に述べておられますし、私も例によって「どのように変わっていくにせよ、ゆっくり進んでいくことが大事」という、まあ情けない話になっているわけですね。しかし現時点で誠意ある回答をしようと思うとそうなってしまうというのが現実ではないでしょうか。
このあたり、hamachan先生のブログのこの記事なんかにもつながってくる話なのですが、この日はそこまでは進みませんでした。