出井智将『派遣新時代』

出井智将さんから、ご著書『派遣新時代〜派遣が変わる、派遣が変える』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

もう1年ほど前になりますが派遣業界の方々が対象の勉強会にお招きいただいたことがあり、勉強会というので10人か20人くらいの規模を想像していたのですが、大きな会場に数百人の受講者がいて驚いたことがあります。年に数回開催していて毎回そのくらいの規模だとお聞きしてその勤勉さに敬服した覚えがありますが、ことほどさように派遣業界の歴史とは法改正や制度変更、さらにいえば政治的な思惑に翻弄され続けてきた歴史だったと気づいて納得しました。
著者の出井さんは山梨県で製造派遣会社を営む経営者であると同時に、業界団体の役員として法改正などに長年関与してこられた方です。この本では、派遣労働に関する解説を交えながら、秋葉原事件や長妻プランなど派遣業界がさまざまに批判され翻弄されてきた経緯を当事者の目から描き出し、現状の派遣労働をめぐる議論の問題点を整理したうえで、現在国会審議中の改正派遣法の内容と意義を解説し、業界と政策の進むべき方向性を示しています。並々ならぬ熱意と使命感をもって業界の発展と派遣労働者の福祉改善に取り組んできた著者であり、全体としては平易な語り口と抑制的な論調で一貫していますが、しかしところどころに強い思いが顔を出すのが非常に好感が持てます。