年次有給休暇、5日取得を使用者に義務付け

今回の労働条件分科会では「新しい労働時間制度」のほかにも多様な論点が検討されており、その中に年次有給休暇の一部について労働者に取得させることを使用者の義務にしようという話がありました。その日数をどうするかについては、前回取り上げた際(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150120#p1)にはまだ「●日」となっていましたが、どやら5日という線で落ち着くようです。きのうの日経新聞から。

 厚生労働省は2016年4月から社員に年5日分の有給休暇を取らせるよう企業に義務付ける方針だ。19年4月からは中小企業の残業代も引き上げる。時間ではなく成果に対して賃金を払う制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)も、対象が広がりすぎないよう年収基準に歯止めを設ける。働き過ぎを防ぎながら規制を緩める「働き方改革」を促す。

 有休は6年半以上働けば年20日分もらえるようになるが、日本では実際に取った取得率が50%弱にとどまる。管理職を含むすべての正社員に年5日分の有休を取らせることを企業の法的義務にする。社員から有休取得を申し出る今の仕組みは職場への遠慮で休みにくい。欧州諸国は事実上の消化義務を企業に課しており取得率が100%近い。日本も同じような仕組みを入れる必要があると判断した。
 労政審に参加する労働組合の代表は過労を減らすため、年8日分の義務付けを訴えていた。経営者代表は企業の負担が増えるとして3日分を主張しており、調整して5日になった。社員が自ら2日の有休を取れば、企業の義務は残りの3日分にする。既に有休消化に取り組んでいる企業の負担が増えないようにする。
平成27年2月4日付日本経済新聞朝刊から)

前回(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20150120#p1)も書きましたが取得促進をはかるためであれば私は個人的にはこのアイデアには賛成です。結局のところわが国の企業では(特にキャリアへの意欲のある従業員については)、まあかなり改善されてきたとは思いますがそれでもまだ休ませることのほうが休ませないよりはるかに難しいというのが実情ではないかと思うからです。でまあ一気にやるのは労使ともに対応できないでしょうし企業・職場サイドの負担もあるので漸進的に進めるべきだというのも前回書いたとおりで、今回の5日というのはたいへんいい落としどころではないかと思います。労使で言いたいことを言って間をとったみたいな手続きを踏んだようですが最初からここに落とすつもりだったんじゃないかなあ。いやそう思うくらいいい落としどころだと思うわけです。
理由は2つあって、第1に5日くらいならまあ労使ともに戸惑うことなく事前指定ができそうだという点です。これについては使用者は労働者の希望を聞き、それを尊重して指定しなければならないことになるようですが、「いやいつ休んでいいかわかりません」という労働者であっても(けっこういるのではないかと思いますが)、まず自分の誕生日、配偶者の誕生日、結婚記念日…といった記念日、あるいは子どもの入学式とか卒業式とか、あれこれイベントもあるでしょうから、そんなので埋めていけばそこそこ5日くらいにはなりそうだからです。独身の若者は自分で遊びに行きたい日を考えるでしょう。
もう一つは、月曜から金曜まで5日間連続指定すれば前後の週末をあわせて9連休にできるという点で、これは3日でも8日でも平日が2日余ってしまうのと比べるとたいへんに切りがよくて使いやすいといえそうです。連休のない秋季に交替で9連休を設定するのもいいでしょうし、閑散期に思い切って全社で9連休を設定すれば企業の特色ある優れた労働条件として訴求できるかもしれません。最近あちこちで書いてますが全休日は用役費なども不要になるのでコストダウン効果も大きいですし。
加えて、この制度を導入して5日分を指定年休にしたところ、労働者が時季指定する年休取得日数がその分減ってしまいましたという話では意味がないわけです。それを考えると、特に根拠があるわけではないのでなんとなくの話ではありますが、それでもなんとなくバラ取りするより連休のほうが、さらに交替より一斉のほうが、なんとなく労働者の時季指定による取得を減らす効果は小さいのではないかという気がします。いや本当になんとなくですが、しかし5日にしたことでこういう使い方も可能になって使い道が広がったのはいいことだと思います。
ということでまず5日で始めてあれこれ試してみて、慣れてきたらだんだん増やしていくということでいいのではないでしょうか。各労使がそれぞれのニーズに応じて知恵を出し、好事例は情報交換するなど、せっかくの制度ですから有意義に活用されることを期待したいと思います。