鶴光太郎先生

1月5日に、RIETIのサイトの鶴光太郎先生の論考が掲載されました。
http://www.rieti.go.jp/jp/columns/s06_0003.html
同感することが非常に多いのですが、ここでは一点だけ問題点を指摘しておきます。

…有期雇用の締結は自由に認めるとしても、雇用期間中の待遇や雇い止めの際の対応について労働者側の納得感が得られるような措置をいかに体系的に構築するかが必要となる。たとえば、有期雇用労働者に対してもスキルアップに向けたインセンティブが高まるような雇用期間中の年功的な待遇(期間比例の原則適用)、雇い止めの際における広い意味での金銭解決の活用、職探しの支援など、検討すべきテーマは多岐にわたる。
http://www.rieti.go.jp/jp/columns/s06_0003.html

先生、期間比例の原則適用はダメです。
あらかじめ有期契約労働者の待遇が年々上がるようにセットしておけば、その賃金に見合った貢献を得るべく企業は教育訓練を行うだろう…という発想でしょうが、たぶんそううまくは行かないでしょう。もちろん、自動車メーカーの期間従業員のように、それに近い運用が行われている実態もあるわけですが、もし期間比例原則を法定して義務化するようなことをしたら、大半の有期契約労働者は賃金が上がらないように1年で雇い止めされるだろうことは想像にかたくありません。
このブログでもたびたび書いていますが(というか、このエントリでも前のほうで書いてますが)、規制強化を通じて対象を思い通りに動かそうというのは非常に難しいと考えたほうがいいと思います。有期契約労働者に対する教育訓練を行わせたいのであれば、契約満了時に疑問の余地なく雇い止めが可能となることを担保したうえで、5年、10年といった長期の有期契約を認めていくことが望ましいでしょう。5年、10年となれば教育訓練投資の回収の期待も高まりますから企業としてもそれを行いやすいでしょうし、また、それで企業にとってさらに長期的に必要な人材に育成された場合には、正社員に切り替えるということも起こりやすくなるはずです。短絡的に妙な規制強化を行うよりは、障害を取り除いたほうが効果的な場面ではないかと思います。