雇用 今後の見通しは

もうひとつ一昨日の日経新聞のインタビュー記事から。「月曜経済観測」のコーナーに王子製紙会長・経団連雇用委員長の鈴木正一郎氏が登場しておられます。

−−−完全失業率は今後どう推移するでしょう。
「経営者は設備投資をして雇用を増やしていこう、という気にまだなっていないと思う。失業率はしばらく高い水準が続き、場合によっては6%に届くかもしれない」
−−−雇用調整が正社員に広がるという見方も出ています。
「経営者は投資に慎重な一方で、景気が回復したときに勢いよく飛び出せるよう、準備しておきたいという気持ちもある。正社員の雇用はできるだけ守りたいと考えているはずだ」
バブル崩壊後、日本の企業は全体で400万人もの過剰雇用を抱えたといわれたが、採用の抑制で10年がかりでなだらかに調整した。米国などに比べ、経営者は雇用を守ることへの意識が強い。企業を正社員の雇用調整に踏み込ませないことが、政府の経済運営の重要な課題だ」
(平成21年11月2日付日本経済新聞朝刊から)

うーん、これはなかなか率直な発言ではありますが、しかしその「採用の抑制で10年がかりでなだらかに調整した」ことに対しては大いに言いたいことがある人たちも多数いるだろうと思うんですけどね。
ただ、結局既存の正社員の雇用を守る理由は「景気が回復したときに勢いよく飛び出せるよう、準備しておきたい」という、いたって実利重視のものだということもはっきり言っているわけです。なにも既得権を守るとか、文化とか伝統とか(笑)いったものではない、基本的に技術・技能・能力の問題だということも明言されているわけです(まあ、賃金水準との関係はありますが、これは賞与の減額とか「成果主義」とかでそれなりに対応できるわけで)。
そうなると、結局は経済の回復がもっと速く、「10年がかりで」なんて長期間かけずに済めば「ロスト・ジェネレーション」の問題も大きくはならなかっただろう、という部分が重要になってくるわけで、やはり経済の活性化が最大の雇用対策ということになります。つまり「企業を正社員の雇用調整に踏み込ませないこと」というのは、そうならないように経済運営をしっかりやるべきだ、という意味であって、現状以上にさらに正社員の雇用調整を強く規制すべきだという意味ではなかろうと思われます。