「社会主義のほうが効率的」

さて、話はかわりますが、民主党中心の参院会派(「民主党・新緑風会日本新・日本」というのか?)からは八代先生(ともうお一方)に対して3人が質問に立ちました。そのひとりが東電労組出身の小林正夫先生ですが、残りは森田高先生、桜井充先生という「お医者さん」です。で、このお二人の発言はといえば、(もちろん他のことも言ってはいますが)社会保障費の二千二百億円カットはけしからん、混合診療は許せないと、あなたは日医の主張をしに来られたんですか(そうなんでしょうが)、と伺いたくなるような内容です。その中から極め付けの一節を。

○櫻井充君 僕は社会主義政策、悪いと思っておりません。つまり、全部が僕は社会主義だと言っているわけではなくて、医療の分野は社会主義の方が効率的ではないのかと思っているだけの話です。
 一方で、例えば建設業なら建設業でどうかというと、例えば中心市街地の空洞化の問題を考えると、それから、これからの高齢社会を考えたら、もう一回これ地ならししてもらって区画整理事業をやってもらって、まあ五階建てか十階建てのマンションを建てて、そこに高齢者の方に住んでもらった方がよっぽど効率的なんですね。ですが、それはもう民間需要でやればいいわけですよ、民間のファンドとかそういうものを使って。
 そうすると、建設業がむしろ公共事業に依存している体質がおかしい、今の医療を民間の方にどんどんシフトさせていくというのが僕はおかしくて、流れからするとそうではなくて、そうではなくて、医療や介護というような公的セクターでお金を回していくと。

いやー、建設族や道路族の先生方が聞いたら烈火の如くお怒りになりそうなご発言ですが、それはそれとして、それはみんな思っているわけですよ、「資本主義、市場経済、自由競争、これはもちろん大切だ。しかし、自分のところだけは社会主義の方が効率的だ」って。とりわけ目に付くのが医療と教育ですが、ほかにもたくさんあるでしょう。再販制度死守を主張する新聞業界なんかもその一種かもしれません。民間企業だって談合をやっていたりする。
自由競争が技術革新や経済発展につながるということはよくわかっているけれど、さはさりながら競争はつらいからできれば免れたい。自分以外の人たちが競争にしのぎを削って経済を発展させてくれて、自分たちはそれにフリーライドして楽をできればいちばんいい。だからあれこれと理屈を考えて、自分たちは「公的セクター」だから競争はしてはならない、参入規制で競争相手は排除せよ、公定価格で実入りを保障したうえで足りるまで腹いっぱい予算をよこせ、「自分の分野は社会主義の方が効率的だ」、と主張するわけですな。で、これは一種の自己催眠のようなものなのか(なわけないか)、そういう人は本当に心の底からそうだと信じているのかもしれません。もちろん、すべてが自由競争でいいわけはありませんし、政府の関与が相当程度必要な分野ももちろんあるでしょう。しかし、「自分の分野は社会主義の方が効率的だ」とまで平然と言い切るとなるといささか行き過ぎではないかと思います。