「130万円の壁」損失補填

 「制度がなければ『百三十万円の壁』を超える決心はつかなかった」。包装用フィルムメーカーのクリロン化成(大阪市)岡山工場。子会社のパート社員、石田昌江さん(45)は振り返る。
 パートの年収が百三十万円を超えると夫の扶養から外れる。社会保険料を払う分、手取りが減るため、年末に勤務日数を減らす女性が多い。同社が二〇〇六年八月、「百三十万の壁・補助制度」を導入するまでは石田さんもそうだった。
 これは年収が百三十万円を超えたパート社員に対し、手取りが減った分を時給に上乗せする形で会社が「損失補てん」する制度。年間二十万円が上限だ。業容拡大でパートは貴重な戦力。「意欲を高めてもらうため壁を超える支援が必要」と栗原清一社長(63)は話す。適用者は本社、子会社で十人。パート全体の二割にあたる。負担額の多寡は別として「身銭」をきってもパート活用をしたいとの本気度はみてとれる。
 勤めて約四年。石田さんは昨年、初めて「壁」を超えた。今年の年収は百七十万円を超えそうだ。年収調整という足かせがとれ、「頑張って働きたい」。
(平成19年4月24日付日本経済新聞夕刊から)

 長時間働いてほしいときに働いてくれる人の単価が上がるのは当然といえば当然ですが、面白い事例です。こういう話をみるにつけ、パート労働者への社会保険の拡大を急いでほしいと思います。