農民工

 きのうの日経新聞で、中国の農村出身出稼ぎ労働者の実態が紹介されていました。

 中国政府がこのほど発表した「中国農民工調査研究報告」で、高度成長を支える農村出身の出稼ぎ労働者(農民工)の雇用や生活が極めて不安定な実態が浮き彫りになった。
 故郷を離れている農民工は推定約1億2千人。地元の工場などで働いている農民を含めると約2億人に及ぶ。すでに第2次産業の全労働者の58%、第3次産業の52%をそれぞれ占め、特に組み立て加工産業では68%、建築業では80%に達する。
 2004年の農民工の平均月収は780元(約1万1千円)で、同年の全労働者平均(1335元)のほぼ半分。7割は月収800元以下で、500元以下という人もほぼ3分の1に達する。しかも賃上げペースは遅く、「物価上昇を考慮すると実質的に賃金は下がっている」。半面、平均労働時間は都市出身の労働者より長い。農民工の多い広東省の珠江三角地帯では、1日平均の労働時間が12−14時間の人が46%を占め、休日のない農民工も47%いる。
 賃金の支払い遅延は「時々ある」が35%、「いつもある」が15%。農民工は教育水準や権利意識が全般に低く、雇用者と労働契約を結んでいる農民工は53%にとどまり、16%は労働契約の存在さえ知らないという。
(平成18年4月18日日本経済新聞朝刊から)

それでも、農村で農業をやっているよりはマシなのでしょうね。聞いた話なので信憑性はゼロですが、中国では内陸から出てきて沿海部で数年働き、最低限の生活で貯蓄に励めば、故郷で小さな店を出せて、一家は苦しい農業労働から解放されるのだそうです。それが1日平均12−14時間の長時間・低賃金労働のインセンティブになっているのでしょう(ところで休日はどうなっているのでしょうね?)。これも中国社会の矛盾の一部分なのだろうと思うのですが、こんな現実があっても政権がもっているのは一党独裁体制と思想統制ゆえなのでしょう。
こんな国と国際競争しなければならないのですから、日本企業も大変に決まっています。労働組合も自由に作れない国でこんな低賃金・長時間労働が行われていて、それとの競争上の必要から雇用の減少や労働条件の抑制が余儀なくされているわけです。連合とか、日本の労働組合も、格差が拡大するから規制緩和がけしからんとかいう与太話にウツツを抜かしていないで、もっと国際連帯に力を入れて、中国で結社の自由を樹立することに力を入れたらどうなんでしょうか。
そうなると中国に進出している日本企業が困らないかって?なんのなんの、そうなれば日本企業はさっそく日本的労使関係を輸出して徐々にその現地バージョンを作り上げ、他国企業に対する優位を築くに違いありません。かつて北米でそれが行われ、いま東南アジアで苦労しながらもそれに取り組んでいるように。