雇用保険給付の不正受給

今朝読売新聞が、一面トップで雇用保険関係の給付金の不正受給を報じています。

 失業者を生み出さないための助成金事業などを行っている厚生労働省の「雇用保険3事業」で、2002〜03年度の2年間の不正受給総額が約27億円に上っていることが、同省などのまとめで明らかになった。…
 中でも、新規事業に進出して従業員を雇った中小企業を助成する「中小企業雇用創出人材確保助成金」を巡る不正受給が突出して多く、2年度分を合わせて計約17億5000万円と、全体の約65%を占めていた。…
 一方、不正受給は、失業等給付でも相変わらず多く、02年度が23億9000万円、03年度が20億5000万円に上っていた。…

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 失業手当などの「失業等給付」でも、同期間の不正受給は約44億円に上っており、雇用保険全体では、71億円もの保険料などが不正に支払われていた。
  
雇用保険71億円不正受給 返還、回収進まず 暴力団資金源にも」から抜粋
平成17年3月11日付読売新聞朝刊

読売新聞は厚生労働省の審査の甘さや回収の手緩さなどを強く批判しています。もちろん、審査や回収をしっかりやってもらわなければいけないのは当然としても、この件に関しては厚労省にも若干同情すべき点もなきにしもあらずです。
  
もともと「中小企業雇用創出人材確保助成金」は、字面のとおり、中小企業ではなかなかいい人材が採れないということで、人材確保を支援するために設けられたものです。ところが、90年代以降の雇用失業情勢の急速な悪化を受けて矢継ぎ早に雇用対策が打ち出されるなか、この助成金も98年の「緊急雇用開発プログラム」で支給率が引き上げられ、雇用創出策のひとつとして位置づけられることになりました。
ところが、95年の新総合的雇用対策や99年の雇用活性化総合プランなどもふくめて、これら雇用創出をめざす給付金等の利用は(一部、自治体が直接雇用するための基金などを除いて)きわめて低調でした。経済情勢が最悪なうえ、バブル崩壊後の過剰雇用にさんざん苦しんだ(でいる)企業としては、行政が多少補助金を出したところで正社員を増やすわけもなく、これは当時から指摘されていましたが、さりとて行政としても打てる手は打たなければならなかったということでしょう。
こうしたなかで、各種助成金の予算消化にはかなりのプレッシャーがかかっていたであろうことは容易に想像できるわけで、であれどうしても審査が甘くなるというのは情においてはうなずけるところではないでしょうか(だから甘くていいというわけではないにせよ)。
また、失業給付についていえば、定年退職やいわゆる寿退職などで、再就職するつもりのない人が形だけ求職活動をして失業給付を受け取るとか、本当は求職活動のかたわらアルバイトなどをしていて、本来は受給資格がないのに知らん顔して失業給付を受けるとかいうのは昔々から当たり前に行われてきました。これらをすべて審査の段階で振るい落とすのは至難のわざでしょうし、その後すべて摘発しろというのも無理な注文でしょう。摘発されているのはおそらくは氷山の一角でしょうから、摘発が増えているのであれば行政はよく頑張っているとすら言えるのかもしれません。少なくとも失業者が増えれば不正受給が増えるのは当然だということは認めてあげなければ気の毒でしょう。
そもそも不正受給はなにより不正受給する人が悪いというのは当然のことで、とりわけ失業給付については、広く国民に「保険料を払った(とはいっても半分は事業主負担ですが)のだからもらって当然」という誤った意識が浸透しているのが根本的な問題だろうと思います。