一律規制の非(1)

続く特集は「仕組みを創る」ということで、労働法学者がお二方登場します。後の方のエッセイでは土田道夫先生も登場しておられます(これは残念ながらウェブでは読めませんが)ので、今号は労働法学者が多いですね。
まずは数少ない規制緩和派の労働法学者のひとり、小嶌典明先生です。
http://www.sanseiken.or.jp/forum/89-tokusyuu1.html
こちらは図表がないとかなり苦しいのではありますが…。

 総務省統計局の「労働力調査」(詳細集計)によれば、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員(以下「非正規雇用者」という)の割合は、2010年平均で34.3%と、過去最高水準にある(男女計、以下同じ)。一方には、大学生の採用内定率が過去最低を記録といった報道もあり、このことから、定職に就けない(いわゆる正社員になれない)若者が増えたと、ともすれば考えやすい。では、実際はどうなのか。
…過去8年間に増加した非正規雇用者(307万人)の7割弱(68.4%)は、55歳以上の高齢層(210万人)によって占められている(非正規雇用者全体に占める55歳以上の高齢層の割合は、2010年現在33.4%となっており、2002年の25.4%から大幅に増加している)。…15-24歳の若年層については、むしろ大方の予想に反して、緩やかな増加にとどまっている(過去8年間における増加幅は、他の年齢階層と比べても小さい)。
 非正規雇用者の割合の増加=「雇用の不安定化」と考える向きもあろうが、その多くが労働力人口の高齢化によって説明可能とあれば、少しは冷静な見方もできよう。ともあれ、非正規雇用者の割合が上昇を続けているからといって、そのことだけで規制強化が必要になるといった短絡的な思考は、努めてこれを避けるべきであろう。

そのとおりなのですが、これだけだとやや問題を過小評価している印象を与えるような気もします。もちろん指摘のとおり非正規労働のすべてが問題だというわけではありませんが、生活困窮につながりやすい生計維持者の非正規雇用と、能力・キャリア形成を困難にする若年の非正規雇用はやはり政策的対応が必要な問題だろうと思います(加えて若年については失業率が高い/上昇していることも問題です)。時間がなくなってきたので明日に続きます。