ドリーム・マッチプロジェクト

サクサク書けるのでもうひとつ行こうかな(笑)。次に取り上げるのは5月17日のエントリ、タイトルは「内定率と基礎学力を同時に向上させる方法」です。これはなかなか興味深い内容を含んでいます。
http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/69f8869bcdd1d16c6b536b4bc4addba9

 国が学生と企業のマッチングサイトを立ち上げるらしい。
 民間企業にやらせればいいじゃないかという意見もあるとは思うが、国の看板の下、低コストで利用できる全国一律の仕組みを作ることには大きな意義があると思う(実態としてはリクルートに丸投げと思われるが)。
…いわゆる「採用におけるミスマッチ」というものの最大の原因は、…ネームバリューの無い企業の求人なんて誰も見にこない。…
 学生の側にしても、みんながみんな「絶対に大手限定」なんて考えているわけではなくて、草の根をかき分けて探すよりも、どーんと高く伸びている木に群がる方が楽だからそうしているにすぎない。
 こうして、…巨艦企業にはますます人が集まり、隠れてはいても優良な中小には誰も人が来ないなんてことになる。
 実際には後者の方が高待遇なんてことは結構あるのだけど。
 「求人出しても誰もこないじゃないか。若いもんはなっとらん」というのは、…まあ自分で探し出して応募する力が無いという点はおっしゃる通りだが、そもそも草の根に求人が埋もれているという事実すら知らないのではないか。
 そこで、公共マッチングサイトの登場だ。国の看板で大々的にやり、全国の大学に積極的に利用させればそれなりに強力な“出会い系サイト”になると思われる。
 ついでにいうと、ハロワレベルの求人情報照会だけではなく、一次選考機能までやらせればいい。
 たとえば筆記試験+SPIくらいまでを受けて登録し、「あなたの希望職種で合格可能性90%以上の企業は、北海道3社、広島2社〜」なんて具合にマッチングできるようにすれば、より効率的な市場になる。
 センター試験の就職版というわけだ。
 実際、自分の高校時代を振り返ると、二年生の時に全国共通模試を受けて、その結果をもとに「自分が進学できる大学」をみんなで探していたものだ。
 「うーん、医学部なら広島、長崎、頑張って東北か」的なノリである。
 全国共通テストという土台を通じて、全国大学マップとその中での自分の位置づけが把握できたからこそそういった選択が可能だったわけだ。
 大学入試というのは、日本でもっとも効率的な市場だと思う。
 余談だが、試験内容をある程度大学の専攻内容とリンクさせれば、一種の卒業検定試験的なものとなり学生の基礎学力向上にも貢献するだろう。

このあとはなぜか就活から外れて転職の話になってしまうので割愛しますが、ここまでの間で私が同感できるのは「低コストで利用できる全国一律の仕組みを作ることには大きな意義がある」ということと「学生に優良な中小企業の求人情報を提供することは有意義」そして「大学入試は効率的な市場」という意見です。
城氏がリンクしている読売の記事(http://www.yomiuri.co.jp/feature/20091120-054987/news/20100515-OYT1T00491.htm。これによるとこのサイトは「ドリーム・マッチプロジェクト」というらしい)には「交通費いらず?」という見出しがついていますが、実際、就活に要する交通費はかなりの負担になるようで、それが就活の制約になるということもあるようです。経済力の格差が就職機会の大きな格差につながることは好ましくないわけで、国がこうした低コストで(というか、無料で)利用できるサービスを提供することはまことに有意義といえましょう。
また、学生さんの情報収集能力に限界があるのは当然かつやむを得ないことなので、それを補強するサービスを提供することもマッチングの改善に有意義でありましょう。あまりに過大な期待をかけることもできないと思いますが、全国の大学で活用してほしいものです。余談ですが、城氏は若者の味方のはずなのに、ここでは学生さんに対してずいぶん辛辣な表現を使っておられますね?
なお、城氏がどういう意味で言っているのかはともかく、少なくとも上位〜中位校に限れば大学入試は基本的に自由競争で(帰国子女枠とかの例外はありますが)参入者も多く、就職市場などと較べれば完全情報にも近いわけで、たしかに「効率的な市場」という言い方もできると思います(だから、学校名が就職時の潜在能力の有力な代理指標になりうるわけです)。
「ついでにいうと」以下はたぶんネタでしょうが、あまり愉快な話とも思えません。ただ、これが実は「官能的な採用試験」を批判する社民主義の論者の主張に非常に近いものがあるというのは興味深いところです。なるほど、考えても見れば、若者の味方を自任して日本的雇用慣行を批判する城氏と、「教育の職業的レリバンス」とかを主張する人たちとの論調が近くなるのは当然といえるかもしれません。「企業は募集の際に求める具体的職業能力とその評価基準を明確化し、それのみで採否を決定すべきである、潜在能力だのコミュニケーション能力だの社会人基礎力だのいった曖昧な能力を「官能的」で明確化不能な基準で採否を決めるべきではない」という主張の理想の行き着く先は、実は大学入試の世界になるんですね。