きのうの続きです。
野川忍『わかりやすい労働契約法』
野川先生は同時に本格的な教科書も出されましたが、ここではこちらを。労働契約法案の成立を受けて、早くも何冊か実務指南書が出ているようですが、この本は労働契約法の必要性と意義、法案作成の経緯をきちんと解説し、そのうえで労働契約法の各条文の意味、意義をていねいに説明しています。書名よりも、カバーに記載された英文標題の「The New Rule for Employment Society」のほうが本書の意図をよく示していると思います。
昨年末に出て、一部でなにかと物議をかもした本です。当時はなかなかユニークな(笑)本だなあというか、福井先生またやっとるわいくらいの感想でしたが、
日本労働弁護団の機関誌「季刊労働者の権利」が錚々たる労働法学者を動員してこの本への反対特集を組んだのを見るにおよんで、こりゃたいした本だなあと再評価した次第。内容がいいとかいうことではなく、とにかく論争的という点を買って採用してみました。書評は…おっと書いたことは書いたがまだブログにアップしていませんでした。あわてて
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20071203にあげました。
労働法の教科書といえば
菅野和夫『労働法』が定番と相場が決まっていますが、労働法にあまり関心のない学部生にはかなり手ごわい感もあります。この本はボリュームをそれなりに抑制しつつも(とはいえ依然として相当の分量ではありますが)労働法の理念や考え方などをきちんとおさえていますし、文章も法律の教科書としては読みやすく、このところ流行?のケースから入って解説するというスタイルもあってなかなか面白く読めます。学部レベルの基本書としては必要十分ではないでしょうか。
八代尚宏『「健全な市場社会」への戦略−カナダ型を目指して』
これも昨年末の本で、昨年は間に合いませんでした。著者は、
経済財政諮問会議などでは、さまざまな抵抗がある中での「改革」の推進役という立場もあるのでしょう、時として極論や激しい主張を展開していますが、この本で示された政策パッケージをみると、実際にはかなり現実的で、それなりに一応のバランスをとっている(この点少なくとも福井先生とはかなり違う)ことがわかります。というか、この本の労働政策に関する記述って、諮問会議の専門調査会とかの主張とずいぶん違うじゃないですか。書評は
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070221。
山田昌弘『少子社会日本−もうひとつの格差のゆくえ』
具体的な政策提言には若干ついていけない感もありますが、とにかくこの著者の『「できれば避けて通りたい、おおっぴらには口にしにくい」しかし多くの人が「実はそうなんじゃないか」と感じていること』をあからさまに提示したうえで議論を進める姿勢はそれなりに評価されてしかるべきではないかと思います。まあ、オカルトでないかどうか検証する作業も必要なはずではありますが。書評は
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070615。