玄田有史・小杉礼子ほか『子どもがニートになったなら』

子どもがニートになったなら (生活人新書)

子どもがニートになったなら (生活人新書)

えーとこれも正しくは「玄田有史小杉礼子労働政策研究・研修機構著」です。
そもそも若年雇用問題、とくにフリーター・ニート問題については労働政策研究・研修機構の研究員たちが旧日本労働政策研究機構が継続的に取り組んできた経緯があり、とりあえずは現時点での総括、という意味合いもあるのでしょうか。そう感じたのは、最初に玄田・小杉両氏による概説がある以降は、この問題に取り組む研究者、ジャーナリスト、さらには支援の第一線に立つ人たちのインタビューで構成されているからです。
通読してあらためて痛感させられるのは、ひとくちに「ニート」と言ってもその実態はたいへんに多様である、ということです。まあ、いまさらいうまでもない当たり前のことなのでしょうが。実際、それぞれのインタビューを比較?すると、けっこう相反する、一連のものとしてみると矛盾する内容がそこここにあるわけです。それそれの論者は自らの経験をもとに自信を持って主張している内容が、第三者的に読むと疑問を覚えるような箇所もいくつかあります。とはいえ、それぞれを単独で読めば、それはそれなりに「さすがに現場で一定以上の実績を上げてきた人」らしい説得力を持っていることも事実です。
ということは、やはり「ニート」の多様性、ということに帰着するのでしょう。実際、小杉氏もいうように、わが国における「ニート」の定義はいたって操作的なもので、非常に多様な存在を包含するものです。
ですから、これまでその調査や支援に取り組んできた人たちに一定の「得意分野」のようなものができることも在る意味自然なことなのでしょう。となると、それぞれが自信を持って語る内容が互いに異なってくるのも不思議ではない。
いずれにしても、この本をよむと、この問題は、少なくともアクティブな分野では「非行政」が大いに成果を出しているといえることは間違いなさそうに思えます。労働行政の分野における、政策課題への非行政分野の関与という点では、ひとつもモデルケースになりうるものかもしれない、とも思ったりしました。