玄田有史「14歳からの仕事道」

14歳からの仕事道 (よりみちパン!セ)

14歳からの仕事道 (よりみちパン!セ)

  ※書評を書きました。(3月7日追記)
 
「14歳からの仕事道」という書名は、即座に大ベストセラー「13歳のハローワーク」を想起させますが、内容までそのエピゴーネンかといえば、決してそんなことはありませんでした。「13歳」が「早く自分のやりたいことを決めなさい」「自分のやりたいことを仕事にしなさい」「サラリーマンやOLになることを考えるのはおやめなさい」などなど、思い込み電波振りまきまくりのオカルト本だったのに対し、こちらの「14歳」は、(多くは著者自身も関与した)調査にもとづいて書かれた科学的な本であり、「やりたいことは簡単にはみつからない、わからなくてもいい」「わからなくても働こう」「やめたくなっても粘ろう」などなど、実務家の実感にも非常によく一致しています。広くおすすめしたい本だと思います。
 内容については近いうちにそれなりにきちんと書きます(日本キャリアデザイン学会ニュースレターの書評の締切を抱えていることもあり(笑))ので、ここでは余談を一つだけ。
  
「13歳」とは正反対のいい本ですが、実は著者の玄田氏も「13歳」の著者の村上龍氏をとりまく「金融経済の専門家」の一員でした(今でもそうなのか?)。そのせいかどうか、玄田氏は「14歳」のなかで村上氏をフォローしています。

…『13歳のハローワーク』という本の著者である小説家の村上龍さんは、こんなことを言っていました。「あの本では、好きなことを仕事にしたほうがこれからは有利に生きられるとは書いたけれど、好きなことややりたいことがなければいけないとか、好きなことややりたいことがなければダメなんだとか、書いたつもりはない」って。やりたいことなんて、本人だけの力でなんとか見つけようとしてもむずかしい。やりたいことは「出会う」ものなんだって。

おいおいおいおい。村上氏は本当にそんなことを言ったのでしょうか?ちょっと信じられませんが、本当に言ったとしたらとんでもないことです。私みたいなバカならいざしらず、日本を代表するベストセラー作家が「そんなつもりで書いたんじゃないんだ」なんて、バカも休み休みいえ、という感じです。あんたの文章力はそんなもんかい。
はっきり言って、「13歳」を読めば「好きなことややりたいことがなければいけない」「好きなことややりたいことがなければダメ」という強い主張を感じるのが普通だと思います。だからこそ「サラリーマンやOLになることを考えるな」という主張になるはずです。
「本人だけの力でなんとか見つけようとしてもむずかしい。」これはそのとおりだと思います。だからこそ私たち人事屋、さらには職場のマネージャーたちは、一人でも多くの働く人が、「自分の仕事が『好きなこと、やりたいこと』である状態」になることができるように努力しているのです。「やりたいことに「出会う」」ためには、サラリーマンやOLは立派な選択のはずです。
ま、本当に言ったのなら、「13歳」が電波であることを自ら認めたようなもんですな(そこまでは行かないか)。間違いに気付かれたことは立派なのですから、率直に「間違ってました」と言えばよさそうなものですが。まあ、それでは100万部も買ってしまった読者(どれほどの人が本当に読んでいるかしらないが)の立場もありませんがね。