本庄淳志『労働市場における労働者派遣法の現代的役割』

静岡大学の本庄淳志先生から、ご著書『労働市場における労働者派遣法の現代的役割』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

労働市場における労働者派遣法の現代的役割

労働市場における労働者派遣法の現代的役割

オランダ法とドイツ法との比較法分析でわが国の派遣法の評価と展望を論じた本です。だいぶ以前の話ですが名古屋で日本労働法学会があった際に本庄先生がやはりオランダとドイツの派遣法について報告され、非常に興味深く拝聴したことを思い出します(たしかhamachan先生も同じセッションで参加されていていろいろご発言されていたと記憶)。本書ではさらに最新の情報が追加されており、オランダ法の研究者というのもかなり珍しいのではないかと思いますのでそれだけでも文献的価値が高そうです。また、分析でも労働者保護の観点に加えて労働市場のマッチング機能にもしっかり配慮されていますし、今回法改正の評価や日本法への含意なども納得のいくものです。
とりわけ、登録型派遣を(比較的短期間で)派遣先を変えながら派遣就労を継続する典型的な派遣労働と、実態として採用をはじめとした人事実務をアウトソーシングしているのと変わりのない派遣労働とに分けて、それぞれに異なる規制を提案されているのが目を引くところです。現場の実態としては、前者で就労していたところある派遣先とのマッチングが良好で勤続が長期化する、というパターンも多いと思われ、線引きがなかなか難しそうな気はしますが…。
400ページを超える重厚な研究書ですが、労働法の研究書としては文章がかなり読みやすいのも特徴で(これは編集の方ががんばられたのかもしれません)、非常にスムーズに読めました。