宮島英昭『日本の企業統治』

経済産業研究所様から、宮島英昭先生編著の『日本の企業統治−その再設計と競争力の回復に向けて』をお送りいただきました。たぶん野田知彦先生でしょうか。ありがとうございます。

日本の企業統治―その再設計と競争力の回復に向けて

日本の企業統治―その再設計と競争力の回復に向けて

90年代後半以降、コーポレート・ガバナンスをめぐる議論がさかんになり、「配当を増やすために人減らしをするのがコーポレート・ガバナンス」などというような議論が横行して閉口したことを思い出します…などと憎まれ口を叩くくらいにこれは私好みのテーマなのですが、これは当時から現在にかけての企業統治の変化と、それがなにをもたらしたかを幅広く検証した本です。かなり難しそうですがなかなか面白そうです。
とりあえず成果主義賃金との関係を分析した第5章(齊藤隆志先生・菊谷達弥先生・野田知彦先生執筆)と配当政策と雇用調整を分析した第10章(久保克行先生執筆)をざっと読んでみましたが、労働組合があると成果主義の導入が抑止されるが労使協議制の存在はその効果を弱めるとか、負債比率やアウトサイダー株主比率の高い企業は成果主義に積極的であるとか、成果主義の導入は直接的には賃金負担の減少を意図したものであるとか、ROAや売上高が下落すると配当や雇用が削減され、かつ時系列で後のほうが雇用削減の傾向が強まること、2期連続の赤字は大幅な雇用削減につながりやすいこと、外国人株主が多い企業では配当を減少させる確率が低いことなどなど、なるほどねという結果がたくさん導き出されていてたいへん興味深いものがあります。他の章も楽しみに勉強したいと思います。