教養講座

東洋経済LIVEセミナー 若手ビジネスパーソンのための教養講座」というのに5,000円払って参加してまいりました。せっかく東京に転勤したので、こういうのにも出てみようかなどと気まぐれを起こしました。講師は大竹文雄先生で、テーマはそのものずばり「競争と公平感」。
https://toyokeizai.smartseminar.jp/public/seminar/view/28
「若手ビジネスパーソン」とありますが半数は私と同程度の年配と見受けられたのでとりあえず一安心。動員のほうは定員80人となっていたところ目算で50人くらいで、中には東洋経済の人もいた感じなので単体では赤字ではないのかなあなどと余計な心配をする私。思うに海外商品市況とか外交問題とかいったビジネス直結の時事問題セミナーと異なり、「競争と公平感」はまさに「教養講座」であって明日のご商売に直接役立つというものではありませんので、まあこんなものなのでしょう。どんな人がいてどんな雰囲気なのだろうというのにも興味があったのですがやはり商売というよりはお勉強という感じで、少なくとも5,000円のモトをとるぞといった雰囲気ではなく、快適に寛いで聴講しました。というか大竹ファンが多かったのではないかな。
さて内容的には『競争と公平感』に書かれている話がほとんどでしたが、途中にはさまれるエピソード(中国人留学生の話とか)がなかなか面白く、また質疑の中で出た震災復興の話は少し目新しいものでした。
少しというのは一昨日のエントリでご紹介した日経「経済教室」と大筋では同じだったからなんですが、ただ「大災害は長期の経済成長にマイナスではない」という研究結果はお興味深く、これは「大災害が非効率な産業の衰退を早め、より効率性の高い産業に転換されていく」「災害によって既得権が失われ、成長の源となる」ということなのだそうです。なるほど、かねてから「長期的な成長を実現するためには痛みを伴う改革が必要」などと言われていたわけですが、現実に天災で痛んでしまったのだから、痛みを伴う改革の痛みを恐れる必要はなくなってしまった、ということでしょうか。どうなのでしょう。
その上で大竹先生は復興には長期の視点が必要なことから、復興政策に関与するのは復興投資の長期的リターンにコミットする50歳未満(大竹先生が50歳なので自分が含まれない設定にしたと言っておられました)に限るべきだと言われました。なるほどと思うのですが、それと財源論(将来世代に先送りせずに増税によるべき)との整合性はどうなるのだろうと不審に思うことしきり。まあみなさんあまり関心なさそうだなあと思ったので黙っておりましたが、別の聴講者の方からはそれをさらに上回る「復興政策への関与は納税額に応じるべき」との意見が出され、いや一面の正論と言えなくはないがしかし大胆ですねと思ったことでした。大竹先生も苦笑しておられましたな。
質疑ではそのほかにも市場競争を忌避する意識と学校教育との関係が問われ、大竹先生が社会の教科書では市場の有効性の話がないままに市場失敗の話が書かれていると答えるなど、まあさすがに5,000円払って勉強しにくるだけのことはあるななどと妙に感心しておりました(?な質問もありましたが大竹先生はどれも誠実に回答しておられてこれにも感心しました。いやわからないことは率直にわからない、調べたいと言われることも含めて)。最後は20:50終了予定のところ21:20発の新幹線で出張に出かけるというスケジュールだったため大竹先生には(開始前に立ち話をしただけで)終了後はお礼もせずにそそくさと会場を後にせざるを得ませんでした。失礼いたしました。