経労委報告に対する連合見解

ツイッター関連のネタをやっておりましたが、この間経団連の「2011年版経営労働政策委員会報告」が発表されております。要約はこちらにあります。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2011/0120/01.html
これに対して、例年どおり連合が「連合見解」で批判しています。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/kenkai/2011/20110119_1295402271.html
ざっと読んでみての第一印象は例によってどうしてこうも口汚く(ryいや今年は例年に較べるとそれほど口汚くありません(笑)。
内容については、まあ連合の立場からすればこういう言い方になるのかなあとう感じです。たとえば、

 コスト削減に依存した競争力強化という経営戦略は、誰の眼から見ても限界なのは明らかである。しかしながら、経営側は相変わらずコスト削減至上主義から抜け出ておらず、付加価値生産性を高めるという経営本来の姿勢が欠如している。全くもって遺憾と言わざるを得ない。競争相手は新興国企業に代わっており、賃金水準を比較して差があるのは当然である。しかし、この差は製品の差別化によって埋められるべきであり、価格のみの競争によっては日本企業が生き残るための展望は開けない。

いやごもっともなんですがじゃあどうしろと。「それは経営者が考えることでしょう」ということなんでしょうが、経団連からすれば言ってるだけですむ人は楽だよねと思っているかもしれません。
しかも、これも例年のことですが報告書に書いてあっても都合が悪いと無視するようで、実際これについても報告書をみると前半の相当部分は言葉こそ違いますがいかにして付加価値を高め差異化をはかるかの記載に費やされていて、どうも「コスト削減至上主義」という感じはしません。
同じようなのが後のほうにもあって、最低賃金について「そもそも最低賃金の抑制によってしか競争力を維持できないとの主張を行うのではなく、いかにその当該企業の収益性を実現するかを追求すべきである。」という記述もあって、じゃあどうしろと(ryしかもこちらは逆に報告書には「最低賃金の抑制によってしか競争力を維持できないとの主張」は見当たらず、書いてないことを書いてあると言ってわら人形を仕立てている感は否めません。

 「恒常的な付加価値の増加が見込まれ」、かつ「競争力を有し、それを今後とも維持できるか」をベースアップの目安とするなど、事実上ベアを否定する見解をも示している。

というのも、しかしこれがベアの否定なのだろうかと思うわけで、たしかに現状ではこうした企業は多数派ではないかもしれませんが、かつて毎年ベアが行われるのが当然だった次期には、現実に多くの企業が中長期のトレンドとしてこうした状態にあったのではないでしょうか。
まあ、連合にしてみれば、経団連の主張はすべて「総額人件費の抑制」を意図したものであるという結論ありきで立論しているのでしょうから、こうした論法になるのも致し方ないでしょう。しかしすべからく人件費に限らずコストの抑制というものは企業経営の基本中の基本のひとつではなかろうかとも思うことしきり。連合の主張を読んでいるとなんか企業が放漫経営を励行すれば景気がよくなると言っているような印象が、とわら人形を仕立ててみる(笑)。
それはそれとしてマクロでは足元では企業部門で資金がだぶついていることは間違いなさそうなわけで、まあ一過性のものかもしれませんが、今後とも有効な投資がないんだったら労働者に分配したほうがいいというのは十分ありうる理屈だと思います。まあ投資家は配当を増やせというでしょうし、方法論としてはせいぜい賞与として支給するにとどまるだろうとは思いますが。配当よりは賞与増のほうが国内にとどまる分マシではないかという気もします。まあそうしたらしたで家計でだぶつく可能性はかなりありそうな。なお、「われわれは内部留保を取り崩せと主張しているわけではない。」と断言されてしまうと「あれ?」と思う人が多いのではないかと思いますが…いや現在は主張していないということかもしれませんが…。