休暇の分散化

国土交通省の観光立国推進本部休暇分散化ワーキングチームが、春と秋に地域別に分散した連休(週末とあわせて5連休)を設定することを提案したそうです。今朝の日経新聞から。

 政府の観光立国推進本部(本部長・前原誠司国土交通相)は3日の作業部会で、春と秋の大型連休を地域ごとに分散する試案を提示した。渋滞・混雑を緩和することで観光需要を掘り起こし、消費・雇用を喚起するのが狙い。ただ経済界などから一律の適用には異論もあり実現は不透明だ。
 試案は全国を5地域に分ける。春は憲法記念日(5月3日)、みどりの日(同4日)、こどもの日(同5日)の3日分を活用。秋は海の日、敬老の日、体育の日を、それぞれ7月20日、9月15日、10月10日に固定して3日分の休日を確保する。
 祝日法を改正し、これらの祝日は記念日として残すが休日にはしない。春と秋に地域ごとに週をずらして3日分の休みを月曜日から水曜日に配置し、土日を合わせ五連休にする。月曜から水曜に配置する地域と、水曜から金曜に配置する地域を組み合わせる案もある。
(平成22年3月3日付日本経済新聞朝刊から)

元ネタはここにあります。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/iinkai/suishinhonbu/pdf/kyuka_wt_02_05.pdf
北海道・東北・北関東、南関東、中部・北陸信越、近畿、中国・四国・九州・沖縄の5ブロックで分散させるとのことで、地域割が具体的にどうなっているのかははっきりしないのですが、資料に記載された人口から推測するにどうやら「南関東」は東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県で、茨城県は入っていないもようです。うーん、となると、川喜多喬先生みたいに茨城県から法政に通勤している人はどうなるんでしょうかね?取手市なんかは大半は首都圏、南関東に通勤しているんじゃないかと思うのですが。最低でもこのあたりは通勤実態に応じた区分割をしないと「観光促進」の趣旨は実現できないように思います。そうなればなったで今度は学校などで不具合、不都合が出てくるのかもしれませんが(私にはわかりませんが)…。
単身赴任も同様で、連休で家族の元に帰ったら子どもは学校でした、ということになるわけですなこれは。まあ、このワーキングチームの座長は社民党の辻本清美氏なので、単身赴任なんかさせるのが間違っている、ということになるのかもしれませんが…。
…などと書いてきたら、この会合には経団連からの意見書も提出されていました(http://www.mlit.go.jp/kankocho/iinkai/suishinhonbu/pdf/kyuka_wt_02_08.pdf)。なるほど、「全国展開している企業、特に製造業は、工場により休日が異なると、 サプライチェーンの連携に支障を生じ」というのもそのとおりですね。というか、そもそも大手メーカーの休日が違っているせいで、複数メーカーに部品を納めている部品メーカーは納品先が一社でも稼働していればそこに出荷するために稼働せざるを得ず、したがって休日の確保が難しいという実態が今すでにあり、産別の中には業界各メーカーの休日を統一させようと頑張っているところもあるわけです。ほかにも、東証が稼働しているのに野村證券(でもどこでも)の大阪支店が休んでいていいのかとか、霞ヶ関から呼び出しを喰らったら「この地域は休みなんですけど」などと言えるわけもなくネクタイ締めて参上しなければならないだろうとか、そういった事態はいくらでも想定できます。
というわけで、経団連のペーパーには「企業の休日については、従来通り労使自治を基本とし、可能な限り地域休暇に合わせるよう努力。」となっておりますが、これは要するに労使協議で地域休暇と異なる休日設定にせざるを得ませんということでしょう。ということでさらに「事情により地域休暇に合わせることが困難な場合、学校の休暇に合わせて、親の有給休暇取得に努力。」というエクスキューズも付加されているわけですが、もちろん学校に通う子のいる親が全員休んだら仕事にも商売にもならないわけで、当然ながら一部の人が1日ふつか取るといったくらいの「努力」にとどまらざるを得ないでしょう。
結局のところ、企業を組織として全部休みにしようとしているところが筋が悪いのであって、企業は稼働させながら連続した年次有給休暇の取得で個人単位での分散化を図るのが本物ではないかと私は思います。具体的な方法についてはこのブログでも何度か書いたので(たとえばhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20091019)繰り返しませんが、それなりに思い切った取り組みも必要でしょう。
このワーキングチーム、メンバーをみると(http://www.mlit.go.jp/kankocho/iinkai/suishinhonbu/pdf/kyuka_wt_02_04.pdf)政治家ばかりなんですね。それで事務局が国土交通省、たぶん観光庁でしょうから、企業経営や人事管理についてはあまりよくご存知ないままに議論が進んでいるのではないかと危惧するのですが、まあ杞憂だろうと思いたいところではありますが…。政治主導、政治主導といって実態をかけ離れた政治家の思いつきみたいな政策が進んでしまうのはやめてもらいたいと思いますが…。まあどうしてもやるというのであれば、とりあえず東京だけでもやってみる、といった部分的試行を先行させてほしいものです。それでいろいろなことがわかるでしょう。