キユーピー、ワークライフバランスに関する職場ミーティングを実施

もうひとつ、月曜日の日経新聞から。食品大手のキユーピーが、各職場でワークライフバランスについてのミーティングを実施し、そのアイデアを参考に人事制度の見直しに取り組むのだそうです。

 キユーピーワークライフバランス(仕事と生活の調和)に対する意識を高めるため、課や営業所単位で社員のミーティングを開く。家族や趣味など、仕事以外の事柄について話し合い、有給休暇を取得したり早めに退社したりするときに、同僚の理解を得やすい環境をつくる。ワークライフバランス推進のアイデアも話し合い、人事制度の改革につなげる。
 ミーティングは人事本部の若手社員らが自主的に立ち上げた「わくわくワーク☆きらきらライフ」プロジェクトの一環。都内の本社や営業所で始め、来春をメドに全国の営業所や工場に広める。
 若手社員の間では、酒を飲みながら仕事や家族のことを語りあう「ノミニケーション」が下火になっている。「同僚の理解がなければワークライフバランスは進まない」(人事本部)ため、話し合いの場が必要と考えた。
 ミーティングを通じてワークライフバランスに関する現場の要望を吸い上げ、二〇一〇年十一月期から始まる新中期経営計画(三カ年)で、それらの声を反映した人事制度改革を実施する考えだ。
(平成20年9月29日付日本経済新聞朝刊から)

「わくわくワーク☆きらきらライフ」プロジェクトというネーミングがすごいなあという感想はあるのですが、まあそれはそれとして、各職場で、仕事に限らずいろいろなことをあれやこれやと話し合うのは人事管理上も案外大切なことです。
まあ、普通は「雑談」という形になるわけで、記事にもあるように、アルコールが入ったりすればさらに自由に、思ったことを話し合えるという寸法なわけですが(キユーピーのミーティングは「一杯やりながら」なのでしょうか、気になるところです)、いっぽうでそれがなかなか難しくなっていることも現実のようで、そこでこういった組織的な取り組みも出てくるのでしょう。
具体的には、「雑談」だとやはり話に加わる人とそうでない人が出てしまうので、全員の意見はなかなか得られにくい。年齢にかかわらず、無口な人や引っ込み思案な人はいるわけですので。さらにいえば、できれば人事制度改革につながるようなアイデアを得たいということであれば、パブリックなミーティングにして記録を作る、ということも実務的には必要になるでしょう。
また、昨今は働き方が多様化していますから、たとえば終業後になんとなく集まって雑談している、という場だと、たとえば午後4時には帰ってしまうパートタイマーとか、週3回派遣されてくる派遣社員だとかだと、なかなか参加の機会がない、あるいは限られる、ということにもなるでしょう。いっぽうで、ワークライフバランスへのニーズやアイデアは働き方に応じて多様なわけですから、こうした人にも話し合いに加わってもらうことは有意義です。となると、やはりなるべく多くの人が参加できるような設定でパブリックに実施することが必要になってくるのでしょう。
加えて、案外大きな問題になるのが労務コンプライアンスではないでしょうか。昨今、労働時間管理の厳格化が求められる中、行政はタイムカードなどの記録によって労働時間を計算することを指導しています。となると、別に仕事をしているわけではなく、仕事の話もしているかもしれないけれど、記事にあるような「家族や趣味など、仕事以外の事柄について」も話題にしている「雑談」をしていたとしても、それでタイムカードの打刻が遅れたりすると、労働時間とタイムカードの記録とに齟齬が出て、労働基準監督署が調査した場合などに「これはなんだ」ということになりかねません。そういうリスクを考えると、どうしても管理職としては「雑談なんかしてないで、仕事が終わったらさっさとタイムカードを押して帰れ」ということになってしまうでしょう。これは職場のコミュニケーションを阻害し、人事管理上も問題なわけですが、しかし背に腹は変えられず、ということでパブリックにやりましょう、ということになるという部分もあるのではないでしょうか。
さまざまな環境変化があるなかで、良好なコミュニケーションを維持し、それを人事施策に生かしていくためには、いろいろな工夫と苦心が必要だ、ということのようです。