「名ばかり店長」ってなんだ?

きのうの続きですが、きのう紹介した夕刊フジの記事に「名ばかり店長」という用語が何度か出てきます。最近たびたび見かける(きのう紹介した記事も最初はそうなってます)「名ばかり管理職」というのもよくわからない用語ですが、「名ばかり店長」となるとなにがなんだかまったくわかりません。
まあ、赤新聞だからそんなものかと思ったら、天下の朝日新聞でも「名ばかり店長」の見出しが躍っていました。

名ばかり店長」団結集会 「人間の自転車操業」に異議


 肩書だけで残業代なしの長時間労働を強いられている外食やコンビニエンスストアの「名ばかり店長」らが19日、東京都内で集会を開いた。裁判中の日本マクドナルド店長の高野広志さん(47)ら8人が、「泣き寝入りはしない」と問題の解決を求めた。
 今月裁判を起こしたコンビニチェーン「ショップ99」の元店長、清水文美さん(28)は、入社9カ月で「管理監督者」となり、労働基準法による労働時間規制の対象からはずれた。多い月で残業は100時間を超えたが、残業代はなし。「皆ぼろぼろになりやめていく。人間の自転車操業だ」と訴えた。
 紳士服大手コナカ店長の高橋勇さん(44)は労働審判を申し立てた。「会社は大好きだがあまりにも誠意がない。380人いる店長に働いた分の残業代を支払って」
(平成20年5月19日付朝日新聞朝刊から)

公平のために申し上げておきますと、どうやらこれは「なくそう!長時間労働名ばかり店長」に尊厳を5.19集会」という労組の集会の報道らしいので、それをそのまま引用した朝日新聞に直接の責任はありません。
さてそこで、「名ばかり店長」ってのはいったいなんなんでしょうかね?一般的な日本語の意味としては、店長という名前はついているけれど実態としては店長ではない、というところでしょうか。この解釈で普通に想像できるのは、店長の上に近隣店舗も含めて管轄している(たとえば)地区長とかいう人がいて、現実の店の運営はその人がすべて仕切っていて、店長は事実上他の従業員とほとんど違わない就労実態にある、というような状況でしょう。こういう状況なら、店長さんが「いや、肩書きだけは店長なんだけど、実際には地区長が全部仕切っているから、私なんか名ばかりの店長ですよ…」と嘆いたとしてもよくわかる話です(さらにそれに続けて「それなのに、店長だからって残業代は出ないんですからねぇ…」という嘆きが続くこともあるかもしれません)。
しかし、日本マクドナルド事件の高野さんとかは、そういう「店長」ではなかったわけですよね?彼らはそれなりに店舗運営の責任者として仕事を任されていて、まさに(一般的な意味での)「店長」として活躍していたわけでしょう。今回の裁判では、それに対して、確かに責任や権限は持っていたものの、労働基準法上の管理監督者には該当しないから割増賃金が支払われるべきだ、という判決が出たわけですが、だから店長ではないとか、「名ばかり」の店長だ、ということにはならないのではないかと思うのですが。
あるいは、「店長」というからには労基法上の管理監督者に該当するような存在であるべきであり、重役出勤して右手にハンコ、左手にうちわを持って座っているのが仕事であるべきだ、という考えであるならば、それはまあ自分たちは「名ばかり店長」だ、ということになるかもしれません。
いずれにしても、自分たちは「名ばかり店長」だ、というのであれば、「店長」という肩書きは取り外して、賃金が時間割で計算されることが明示されるような肩書き、たとえは「店舗主任」とかいう肩書きに変えるのが適当だ、ということなのでしょう。結局のところ、彼らには「この店の責任者は自分なんだ」という「店長」としての誇りや自負はなかった、ということなのでしょうか。まあ、月100時間の長時間労働では誇りも自負もない、ということなのかもしれませんが…。