集票にはなっても

今朝の産経新聞から。『下流社会』の三浦展氏の参院選に関するコメントです。

…三浦氏は「政党は基本的に『非正規雇用はかわいそうだ、みんな正社員にしましょう』と言っているが、この考え方自体がズレているのではないか。フリーターのままでいいという人もいる。彼女もいない、子供もいないのに正社員になる必要はないと彼らは考える」と指摘する。
 そうであるのならば、政党はこれまでの「正規雇用ありき」の発想を転換しなければならなくなる。
 三浦氏は「非正規雇用正規雇用の間を自由に行き来できる、非正規でも安心して生活できる、というメッセージをどの政党が最初に打ち出せるか。このメッセージを打ち出した政党が、若年層をはじめとする非正規雇用者の大きな支持を得るだろう」とみている。
(平成19年7月27日付産経新聞朝刊から)

「フリーターのままでいい」という人もたしかにいるでしょうが、それは現在は景気が良くて、フリーターでもそれなりの労働条件の仕事がそれなりにあるという状況だから、という部分はないのでしょうか?フリーターでは能力や経験の蓄積が難しい、ということは別問題としても、好況に依存した「フリーターのままでいい」は、不況になったときに大変なことになる、というのはつい数年前に思い知ったばかりだと思うのですが…。
非正規雇用正規雇用の間を自由に行き来できる、非正規でも安心して生活できる」というのも、選挙の票集めにはいいかもしれませんが、「不況期に非正規でも安心して生活できる」というのが本当に実現できるかというと、なかなか難しいのではないでしょうか。失業したらどうするかというのは別問題のようですが、不況期になかなか仕事にありつけず、ようやく「週3回、1日6時間の非正規雇用」にありつくことができたとして、それで「安心して生活できる」ようにするのはなかなかの難題だと思うのですが…。
となると、好況期には非正規雇用で自由度の高さを享受でき、不況期には正社員になって雇用と労働条件の安定を確保できるようにする、ということかもしれませんが、需給関係だけで考えてもそんなことできっこありませんし、そんな働き方できちんとしたキャリアを形成できるのかも疑問です。
まあ、あくまで選挙の集票だけを考えればそれでいいのかもしれませんが、その後のことを考えれば、政党にしてみればなかなか言い出せない話なのでしょう。そういう意味では、三浦氏の所論は「全員正社員で高給保証、休みたいときに自由に休めます」といった感じの某政党の主張とたいして変わりないといえるかもしれません。