オシムの言葉

今朝の日経に掲載されていたサッカー日本代表オシム監督に関する連載特集記事から。


 一月のガルフカップを自ら視察したオシム監督も、湾岸諸国の台頭を肌で感じている。かの地では代表であれクラブであれ、チーム運営に王族が深くかかわっている。故に資金力は豊富であり、特徴の一つが「優秀な監督を雇っている、ということ。どのチームと対戦する時も(戦術的な)注意が必要になる」。
 タレントを集め、時には帰化させて強化することも難しくはない。「才能に恵まれた選手が多く野心もある。ただ、その意欲が長続きするかというと、何とも言えない部分があるが……」
 強化における持続性、継続性に難があるのは恐らく「彼らのライフスタイルとも関係するのではないか」というのがオシム監督の見立て。社会のごく一部の人間が決定権を持っていて一日の間で状況が変わる。そこには監督人事も含まれ、交代は頻繁だ。監督は大会ごとにボーナスを得るか解任されるかのプレッシャーにさらされる。そうした過ぎた重圧が、監督に長期展望やリスクを冒すことを許さない。
 その様は、浮き沈みは相当あったものの日本がトルシエジーコとも4年というサイクルを全うさせたのとはかなり趣を異にする。あるいは、それは日本の甘さかもしれず、こうした対照の妙もアジアカップを楽しむ隠し味になるのだろう。
(平成19年6月22日付日本経済新聞朝刊から)

まったくそのとおりで、強い組織を作ろうと思えばそれなりに長い時間が必要ですし、その間を一貫する長期展望が求められます。短期的な結果を強く求められれば、結局のところ有力選手をカネで引き抜いてくるといった対応しか出来ず、それはなかなか長続きしないでしょう。組織内で継続的に人材が育ち、その中から優れた指導者が生まれてくるといった組織を確立するには4年でもまったく足りないかもしれません。
ときに、「オシムの言葉」は、その解釈まで含めても「…許さない」までですね。「日本の甘さ」を指摘しているのは日経の記者であって、オシムではないですよね。まあ、こんなところでも「日本は甘い」と書かなければ気がすまないというのは、日経らしいといえば日経らしくて笑えますが。