賃金と国際競争

日銀の分析結果が今朝の日経で報じられていました。

 経済のグローバル化に伴い、労働者の賃金が伸びにくくなっている。日銀の分析によると、外国人持ち株や輸出比率の高いグローバル企業ほど、生産性の上昇と比べた賃金の伸びが低めに抑えられる傾向が出ている。国際競争にさらされる度合いが高いためだ。労働需給が引き締まり、人手不足感が強まっているものの、企業の賃金抑制姿勢は根強く、家計部門への景気の波及は緩やかにとどまりそうだ。
 日銀は企業のグローバル化に伴う賃金の抑制圧力を調べるため、外国人持ち株比率と賃金の関係を分析。賃金の指標として物価騰落を加味した実質賃金と、労働生産性の伸びからみた妥当な賃金との格差(実質賃金ギャップ)を計算した。
 外国人持ち株比率が高く、グローバルな企業が多い自動車や電気機械などは賃金水準が比較的高い要因もあり、労働生産性が伸びている割には賃金の引き上げが抑えられているという関係が分かった。
 例えば、外国人持ち株比率が三〇%を超える輸送用機械(自動車を含む)の二〇〇四―〇六年の実質賃金は、労働生産性の伸び率に比べ三・四%低いという。
 グローバル企業が多い精密機器や電気機械でも同様に賃金の伸びが低めに抑えられている。海外企業との競争が激しく、人件費の引き上げはコストアップにつながり、価格競争力が低下してしまうとの懸念がある。外国人株主は企業統治に厳しく、利益を株主配当に優先的に回すべきだとの要求も強い。このため企業は賃金を簡単に上げられない環境にある。
 一方、外国人持ち株比率が一五%未満の建設や電気・ガスといった「内需型」の業種では、生産性の伸びに比べた賃金が高めになっている。
 日銀はグローバル化の度合いとして輸出比率を指標にした分析も実施。輸送用機械や一般機械、鉄鋼など売上高に占める輸出の比率が高まった業種で、賃金が抑えられている結果になった。日銀は「労働者側も労賃の安い新興国の台頭や過去の厳しい経験から、賃上げよりも安定的な雇用を志向する傾向があった」とみている。
(平成19年5月25日付日本経済新聞朝刊から)

まあ、そういうことだったんでしょうねぇ。で、賃金は上げられないけれど、儲かった分は賞与で還元する。減益になれば賞与は減らせるから、競争力への影響はそれほど大きくない。配当もかつてのような安定配当は影をひそめ、業績にともなって大きく変動するようになっていますから、労組とすれば「配当を増やすなら賞与も増やせ」と主張するのが現実的ということかもしれません。