ホワイトカラー・エグゼンプションの本人同意要件は有効か

Q.ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)本人同意を要件とするということですが、いくら同意しないことに対する不利益取り扱いを禁止したとしても、現実には同意しないということは難しいのではないでしょうか。

分科会報告では、「対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと 」について労使委員会で決議するものとされています。同意しないからといって、解雇したり賃金を切り下げたりすることはできないわけですから、安心して?不同意とできるでしょう。もちろん、おかまいなしで解雇したり賃金カットしたりする悪質な企業もおそらくあるでしょうが、それはきちんと救済されるはずです。労働審判制をはじめ、こうした個別的苦情処理のしくみは近年とみに充実し、短期間での解決、救済がはかられるようになってきています。
いっぽうで、WEに同意しないことで残業時間が制約され、結果として能力や貢献度が同意した人を下回ったのであれば、それは当然人事評価などに反映されるでしょう。さらに、「これだけの高い年収を受け取り、それにふさわしい専門性と自由度をもって働いているのだから、WEを適用したい」という会社の方針に対して同意しないということは、やはりその分は人事評価などに反映されざるを得ないことも当然でしょう(結果として人件費が高くなるのであればなおさら)。また、管理監督者になれば労働時間規制の多くは適用除外になり、自己管理が求められるわけですから、その一歩手前でWEを適用されることに同意できない人は、管理監督者への昇進を判断するにあたって、その分はマイナスになることは致し方ないでしょう。だから「不同意は難しい」とか、「不同意でも同様の評価、昇進を保証すべきだ」というのは筋違いというものだろうと思います。
もちろん、たとえば負債の返済などのために高額な残業代を得る必要があり、WE適用に同意できないといったケースもあるかもしれません。これはWEに限らず、たとえば育児のために休業せざるを得ないとかいうケースでも同様でしょう。そうしたやむを得ない事情で能力開発やキャリア形成が遅れてしまった場合には、やむを得ないのだから目をつぶって同じ処遇をするというのではなく、キャッチアップできる機会を準備することが、働く人の意欲を高めていく上で大切なのだろうと思います。