日経から「春闘」が消えていた。しかもとっくに。

いまさらのネタなのですが、昨日の日経新聞夕刊は、自動車大手の労組が今次春季労使交渉の要求書を提出したことを報じました。

 トヨタ自動車日産自動車など自動車大手の労働組合は十四日、今春の賃金改善に関する要求書を会社側に提出した。トヨタの労組は賃金改善分として昨年を五百円上回る千五百円を要求。日産の労組は一人あたりの平均賃金改訂原資として七千円を求めた。十五日以降、電機など主要産業で順次、要求が出る予定で、今春の労使交渉が本格的にスタートする。
 トヨタの労組が賃金改善を求めるのは二年連続。昨年は千円の要求に対し、実質的に満額回答を得た。年間一時金は昨年の要求・妥結額を二十一万円上回る過去最高額の二百五十八万円を要求した。
 トヨタは二〇〇七年三月期の連結業績が過去最高益を更新する見通し。しかし木下光男副社長は十四日、「賃金水準は世界的にもトップクラスにある。中長期的な固定費増につながる申し入れに応じるのは極めて困難」と、賃金改善に慎重な姿勢を見せた。組合側は相次ぐ増産で現場の負担が増していることなどを訴えていく構えだ。
 日産は成果主義に基づく給与制度を導入しており、定期昇給やベースアップに相当する考え方がない。賃金改訂の原資として七千円を要求した。
 ホンダの労組は賃金改善分として昨年と同じ千円(昨年妥結額は六百円)を要求した。
 ホンダと日産の一時金要求は国内販売が低迷していることなどから、それぞれ六・六カ月、六・三カ月とし、いずれも前年を〇・一カ月分下回る水準にとどめた。
 十五日には電機大手の労組が一斉に要求書を提出する。また賃金改善について二年に一回交渉する鉄鋼や造船重機などの組合は今年は交渉をしない年にあたるため、住友金属工業など一部の企業が一時金のみの交渉となる。
(平成19年2月14日付日本経済新聞夕刊から)

この記事には「春闘」という語が出てきません。他産業の今後の予定をまとめた表も掲載されていますが、それにも「春季交渉の主な日程」というタイトルがついています。
へえ、と思って「日経テレコン21」で調べてみたら、なんと今年に入って日経が「春闘」という用語を使ったのは「2007年春闘シンポジウム」受講者募集、という告知記事のみでした(なるほど、集客のためには「春闘」が必要でしょう)。いや、気が付きませんでした…。
しかも、昨年、一昨年がどうかを調べてみたら、両年とも、年明けからJC集中回答日翌日までの期間で「春闘」の語が出た記事は3件しかなく、しかもうち1件ずつは「春闘セミナー」です。2004年はどうかというと同時期に10件の記事がありますが、2003年には99件にのぼっていますので、どうやら2004年が転換点になっていたようです。うーん、日経ウォッチャー(笑)としては痛恨事。
まあ、もとより経団連などの経営サイドは「春闘」ではなく「春季労使交渉」という用語を使ってきていますし、連合も意外にも?「春季生活闘争」という「フルネーム」をもっぱら用い、「春闘」に対しては「労働組合にとって、一年で一番大きな闘いが「春季生活闘争」です。マスコミ報道など一般では「春闘」と呼ばれています。」(http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/shuntou_toha.html)と、案外冷淡です。もっとも、これは路線が対立する共産党系の全労連が依然として「国民春闘」という用語を使っていることへの対抗もあるのでしょう。http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/index2007.htmlには「春闘生活闘争」というミスポもあり(本日現在)、やはり定着したことばのようではありますが…。
そういう背景に加えて、近年すっかり様変わりした「春闘」をみると、もはや「春闘」という語をあてるのもなじまない、というのも一つの考え方ではあるでしょう。
ちなみに他紙のきのうの夕刊をみると、同じ出来事がこんな記事になってます。

 春闘相場のけん引役となる金属労協IMF・JC)の中心となる自動車総連(加藤裕治会長)加盟のメーカー各組合が14日、それぞれの会社に要求書を提出した。15日には電機連合の大手組合が要求書を提出する方針で、他の産別の組合も今月中には要求書を提出、春闘が本格化する。
 自動車、電機とも業績のばらつきはあるものの大手組合の多くが昨年に続き、賃金カーブ(定期昇給など)を維持した上で、ベアを含む1000〜2000円以上の賃金改善を求める。【東海林智】
(平成19年2月14日付毎日新聞夕刊から)

ぐっと短い中にも「春闘」が2回登場。もちろん見出しも「07春闘自動車総連が要求書を提出」。連合もいうように(笑)、マスコミではまだ「春闘」健在のようです。