公開講座の履修証明

 政府は、社会人の再就職や転職によるキャリアアップを後押しするため、大学で、金融やIT(情報技術)などの講座を学んだ成果を公的に示す「履修証明」制度を創設することを決めた。小泉首相構造改革が社会の格差を助長しているという批判が根強いことから、「再挑戦」の環境を整えるのが狙いだ。安倍官房長官を議長とする「再チャレンジ推進会議」が5月にまとめる対策に盛り込み、早ければ2007年度から導入する。
 現在、多くの国公立、私立大学が社会人も受講できる公開講座を設けている。講座設置の基準はなく、内容は大学院並みの高度な講座から、一般向けの平易なものまでさまざまだ。中には、独自に受講したことを証明する文書を発行しているところもある。
 新制度について、内閣官房幹部は「履修証明を制度化して、信頼性を高めることにより、企業が人材を採用する際の基準の一つにしたい」と期待している。このため、講座のレベルや受講時間などの基準を示し、それを満たした場合に限って、大学が新制度に基づいた「履修証明」を発行できるようにする考えだ。
 対象は、金融、IT、会計、福祉など再就職につながりやすい分野を想定。1〜2年間程度の期間、専門的で高度な内容を受講することを条件にする見通しだ。具体的な基準づくりや、新制度を学校教育法で規定するか、政令などで決めるかは、今後検討する。学校教育法は、4年制大学の卒業生に学士を、大学院の課程を修了した者に修士または博士の学位を大学が授与すると定めている。政府は「履修証明」を学士に次ぐ地位に位置付けたいとしている。
(平成18年5月8日付読売新聞夕刊から)

うーむ。利に敏い私学はさっそく商売のタネにならないか考えはじめていることでしょう。公開講座ってのはたぶん試験はない(東京労働大学講座みたいに試験のあるものもありますが)のでしょうから、結局のところは、講習会を受ければ取れる資格を乱発するのと大して変わりはありません。文部科学省としては、仕事も権限も利権も大いに拡大するオイシイ話でしょうが。まあ、企業としても採用の際の参考情報が増えることは悪いことではないでしょうが、はたしてどれほど参考になるものやら。もっとも、大学にしてみれば、おおいに参考にされるような講座をつくれば受講者も集まるわけなので、やる気のある大学は知恵をしぼるかもしれません。
この「再チャレンジ推進会議」なる代物、メンバーは官房長官、副官房長官と官僚で構成されています。邪推すれば、格差問題が関心を集めているのをいいことに、「再チャレンジ」にことよせて官僚がやりたいこと(プラス雑多な思いつき)をやろうとしているのではないかという印象です。安倍官房長官も、首相の最有力候補だからといって、あまりおかしなことをしないでくれるといいのですが。