パート残業に割増賃金

今朝の日経新聞で、なんと1面で報じられていました。

 厚生労働省はパートをはじめ短時間勤務の人たちが事前の契約より長く働いた場合、賃金を通常より割り増すことを企業に義務づける検討に入った。法律で定めている週40時間の上限以内でも「残業代」に5-10%程度の割増賃金を支払う仕組みを導入する。パート労働の時間を安易に延長することに歯止めをかける狙いだが、経済界からは労使が個別に協議すべき問題だという声も出ている。
(平成17年10月18日付日本経済新聞朝刊から)

新聞報道の範囲しかわからないのですが、いろいろと考えるべき点はありそうに思えます。


現実問題としては、実務的にどれほどコストアップになるのかは微妙なところです。もちろん、パートが契約時間を超えて働くことは珍しくはないでしょうが、それほど頻繁に行われているとも思えません。高く見積もって全体の1割が時間外だとしても、もともと時間外に働けばその分は(割増分はないにしても)賃金は支払われているわけですから、時間外のみについて5〜10%の割増ということであれば、トータルの人件費としては1%も増加しないでしょう。
そう考えれば、もともとパートというのは時間外をしないのが前提だとすれば、たまたま欠勤が出たから1時間カバーしてくれとか、あるいはお歳暮の期間は忙しいから1時間延長してくれとかいう要請に機動的に対応してもらうのであれば、多少は時給に色をつけてもいいのではないか、とも思えます。実際、すでにパートに割増賃金を支払っている企業もけっこうあるはずです。
となると、それほどパートの残業を抑制する効果があるとも思えず、逆に、むしろ心配なのは、こうした制度をつくることで「パートでも割増を支払えば残業してもらってもいいのだ」ということで、かえってパートの残業が増えかねないのではないか、という点です。心配しすぎでしょうかね。まあ、それでもパートの所得を増やすという意味ではいい話なのかもしれません。
企業としては、むしろそれによってかかる手間のほうが問題かもしれません。もちろん、1%と言ってもコストアップは看過できませんから、企業はより契約期間を短期化して、更新のたびにきめ細かく勤務時間を調整しようとするでしょう。人によって異なる勤務時間をベースに割増賃金を計算する手間も、大企業ならともかく、賃金計算がシステム化されていない企業にとってはたいへんかもしれません。
いっぽうで、当然のことながら労働条件の最低基準を定める労働基準法で、人によって割増賃金が支払われる労働時間が異なっていてもいいのか、という疑問は大きく、こうした無理のある立法をわざわざやるまでのことなのか・・・という印象は禁じえません。詳細な情報がほしいところです。