久米郁男「労働政治」

中国出張に持っていった本です。

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

労組の政治活動を政治学の立場から整理した本で、戦後から「連合」成立までの歴史を中心に、労組が政治活動に取り組む意味の政治学的な解説や、労組リーダーへのサーベイ結果なども紹介され、たいへん面白く、興味深く読みました。企業の労務担当者の多くは、かつての同盟は政治的にも経済合理性路線でそれなりにうまくやっていたのに、連合で官公労組と一緒になってからおかしくなった、という印象を持っているのではないかと思いますが、そうなるに至った事情が歴史的経緯に沿ってわかりやすく解説されているように思います。
「労組の政治活動」については人事・労務担当者にとって有益な参考書がほとんどない(それどころか、労働運動そのものについてもすぐには手頃なものは見当たらない)というのが実情ですので、この本はたいへん貴重ではないかと思います。まあ、新書のせいか若干議論が単純化されすぎているかな、という印象もあり、現実に労働運動に携わっている人にすればいろいろ言いたいこともあるのだろうとは思いますが、まずは多くの人事・労務担当者(余計なお世話ながら、労働関係者にも)に広くお勧めしたい本です。
余談ながら、自分の政治的立場に一致しないものは認めないという人たちからみれば、非常に不愉快な本ではあるのでしょうねえ。おそらくそちらの方面からは叩かれる一方で、それほど注目して賞賛してくれる人もあまり多くはなさそうですから、ある意味損な分野なのかもしれません。労働運動の研究者がどんどん減るのも当然ということになるのでしょうか。もっとも、そちらの方面から叩かれても特段痛くもなければ弊害もなさそうではありますが。いやこれは余計なことでした。