出生率、過去最低を更新

 今朝の日経新聞によると、2004年度の合計特殊出生率は1.28となり、4年連続で過去最低を更新するそうです。一段の少子化対策を要請する議論が高まりそうです。
 そこで日経新聞はタイミングよく、「少子に挑む」の連載を再開しましたが、相も変わらず企業を悪者にするばかりで、進歩がありません。

 …学生結婚して子育てしながら就職活動をする「就活ママ」が登場した。彼女はいま企業の論理に直面している。
 「本当に大丈夫ですか」。鈴木百合(仮名、21)はこの春の就職活動中に面接担当者から何度も聞かれた。「やはり子どものことが気になっているのだろうな」。そんな口ぶりだった。
 専攻を生かしてシステムエンジニアを志望した。仕事が厳しいのは覚悟のうえだ。同居する両親も育児を支援してくれるので仕事と両立させる自信はある。履歴書にも結婚して子どもがいることを書いた。だが、内定は一向に出ない。四月末、最後の一社から不採用通知がきた。「日本の会社は変わらない」。教師の道を選ぼうと思う。
(平成17年5月25日付日本経済新聞から)

自分が採用されないからといって「日本の会社は変わらない」、と決め付けるのはまことに身勝手な理屈ですが、それはそれとして、「専攻を生かしてシステムエンジニア」といったところで未熟練工でしょうから、入社直後のOJTはきわめて重要です。となると、やはり入社直後にある程度仕事に集中できない心配がある、というのは不利には違いありません。そこをカバーするには、経済合理性を犠牲にして「企業が変わる」ことではなく、「子どもがいても仕事に打ち込める」と企業が安心して思えるような支援環境を整えることこそが必要かつ有効なはずです。また、

 中島智子(仮名、30)は医療関連会社で働いている。会社は育児支援の充実ぶりを誇り、子育て社員を応援すると公言する。ただ社内規定にはない暗黙のルールがある。「育児休業取得の際は元の職場に復職できない」
 休めば若い社員に切り替わり、同じ職場に戻れない。中島はそんな光景を何度も見た。二年前に結婚したが積み上げたものを失いたくないから「子どもはいらない」。
(平成17年5月25日付日本経済新聞から)

これまた、企業に元職場復帰させろと云わんばかりの書き方ですが、「若い社員に切り替わ」ってしまう程度の仕事であれば切り替えるのが合理的に決まっているわけで、経済合理性を無視した対策はうまくいきにくいはずです。これも、本当は「休まずに続けることができる」支援環境の整備こそが必要かつ有効なはずです。(話がそれますが、その程度の「積み上げ」であれば、仕事が変わることをキャリアの拡大として前向きに受け止めることもできそうに思うのですが。まあこれは個人の考え方次第で、頼まれもしないのに他人があれこれ言うのは余計なお世話ですが。)
要するに、極論すれば、仕事に限らず「子どもがいても、仕事も遊びも子どもがいないのと同じようにできる」くらいにしなければ効果はないのではないでしょうか。それは企業の役割ではありません。行政が適正なコストで十分な保育サービスを供給できるよう、その大幅な拡充に向けた抜本的な公的保育を民間活力を生かして断行することこそが必要なのではないでしょうか。
まあ、今後の連載ではそちらにも踏み込むのだろうとは思いますが、今日の記事はいかにも進歩がないという印象でした。
(なお、当然のことながら企業は企業として取り組むべきことが多々あることは間違いないと思っておりますので誤解なきよう為念追記しておきます。)