育児保険で保育サービス抜本拡大

きのうの日経新聞朝刊「経済教室」欄に、坂東眞理子氏が「保育サービス抜本拡大 育児保険の創設を」との論考を寄せていました。ポイントを簡単にまとめると以下のようになるでしょうか。

少子化対策で最も必要なのは保育サービスを抜本的に増やすこと。
・育児を社会的に支えるとの理念を明確化するため育児保険=社会保険制度とする。
・サービス内容は保育所・幼稚園のほか一時保育、学童保育なども含む。
・保育サービスの給付は専業主婦も含めすべての親に対するユニバーサルサービスとする。
・サービス供給主体はNPOや株式会社も含め多様なものとする。
・保険料は成人国民一律月額1000円とするほか、扶養控除や公的年金優遇の廃止などを財源にあてる。

なるほど、なるほど。細部や傍論はともかくとして、大筋としてはたいへんうなずける提案です。
なにより、保育サービス拡充に職場の改革と同等の重要性を与えた点は、現行の逆立ちした行政のていたらくを考えれば、大いに歓迎できる議論といえましょう。そもそも、保育サービスが潤沢に供給されれば就業継続が促進されることは明らかですから、そう考えれば保育サービスは職場よりはるかに重要だといえるでしょう。
保険制度の最大の問題点は「取れるところから取る」という制度になりがちなところですが、成人一人あたり定額ということであれば、その心配も比較的小さくなります(国民保険と同様、徴収の確保という問題はありますが)。現状の公的保育所ではすでに、自営業者が「最低の保育料しか払っていない人がベンツで迎えに来る」という有り様なのですから、やりようによってはむしろ状況は改善されるかもしれません。ただ、本来なら、ベーシックなサービスにかかる部分は逆進性のある定額負担より応能負担が望ましいと思われますので、定額保険料はあまり高額にならないように注意が必要でしょう。不足分については、所得捕捉の問題がなく、定額負担に較べればまだしも逆進性の低い(逆進性があることは事実としても)消費税などでカバーすることも考えられます。
論考では言及されていませんが、供給されるサービスの水準と、本人負担の水準が重要なポイントになるでしょう。できれば、あるベーシックな水準のサービスに関しては、なるべく低額かつ定額の本人負担にすることが望ましく、そのためには保険料があまり高額にならない範囲で多少上昇しても致し方ないと思われます。それを上回る充実したサービスに関しては、相当部分を本人負担として、利用者の自由な選択に任せるべきでしょう(多様な主体の参入により、多様なサービスの提供が期待できます)。ユニバーサルサービスという以上、利用者の収入などによって負担額を変動させることは想定されていないものと思われます。妥当といえましょう。
こうした形でサービスの供給が充実するなら、扶養控除や年金優遇の廃止も受け入れられやすいのではないでしょうか。真剣に検討すべき提案ではないかと思います。