東京商工会議所「中小企業・ベンチャー企業の人材育成作戦」

東商が「中小企業・ベンチャー企業の人材育成作戦−先達の知恵から学べ−」という冊子を送ってくれたので、読んで見たらこれが非常に面白く、思わず一気に読んでしまいました。
この冊子では、優良中小・中堅企業29社の調査をもとに、人材育成のポイントを事例をもとに述べています。企業ごとにまとめて記述した事例集ではなく、人材育成の必要性と心構えから始まって、採用、組織、教え方や育て方、キャリア、ネットワークや、さまざまな具体的手法などの各項目ごとに、優良企業がどのように取り組んでいるのかを紹介しており、読み手(中小企業の経営者が念頭におかれていると思います)が自分の企業にフィットするものを取捨選択し、自社なりの人材育成、経営の参考にできるように書かれています。たいへんわかりやすく、説得力のある本です。「人材育成作戦」というタイトルもなかなかよろしい。「人材育成『戦略』」としてしまうとどことなくMBAっぽい、理屈の世界の感じになりますが、「人材育成『作戦』」だと、現場的、実践的な印象がします。ちなみに本文の書き手は中小企業における人材育成の調査研究では第一人者である川喜多喬法政大学教授です。
佐藤博樹玄田有史(2003)『成長と人材−伸びる企業の人材戦略』(勁草書房)は、「成長している中小企業は人材を育成している」ということを大規模調査をもとに計量的に実証していますが、この本は同じことを具体的な事例調査をもとに示したものといえると思います。
会員向けにつくられたもののようで、書店で売る本ではないらしく、誤植が目立ちますし、文章も若干こなれていない感はあります(とくに、事例で紹介されている企業のことを「当社」と書いているのにはいささか違和感があります)が、川喜多氏らしい洒脱な文章も随所にちりばめられ、読みやすく楽しい本になっていると思います。
一応、「頒価1,000円」となっているので、東商に頼めば買えるのだろうと思います。会員企業であれば、無料でわけてもらえるのではないでしょうか。それほどボリュームのある本ではありませんし、読んでみてほしい本だと思います。いくつかは必ず、心に残る、共感できる、後々までつかえる事例、フレーズがみつかるものと思います。
残念ながらISBNコードがついていないので、「はまぞう」で画像を入れることができません。というわけで、「成長と人材」だけリンクを入れておきます。

成長と人材―伸びる企業の人材戦略

成長と人材―伸びる企業の人材戦略