玄田有史『孤立無業』

社研の玄田有史先生から、ご著書『孤立無業(SNEP-スネップ)』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

孤立無業(SNEP)

孤立無業(SNEP)

主に社会生活基本調査の詳細な分析を通じて、意識されることの少ない「孤立無業」の存在を明らかにし、その拡大傾向を警告した本−ということになるでしょうか。著者のブログで長期に連載されていたことをご承知の方も多いと思います。署名や題材からは同じ著者の『ニート』を想起される方も多いでしょうが、本のスタイルはむしろ出世作の『仕事の中の曖昧な不安』に近いものです。『ニート』に対する激しい毀誉褒貶(というか毀と貶が声高になされたわけですが)は私にはまだ記憶に新しいのですが、それでもなおこうした形での問題提起に取り組む著者の信念と勇気に脱帽です。

濱口桂一郎『若者と労働』

hamachan先生ことJILPTの濱口桂一郎先生から、ご著書『若者と労働−「入社」の仕組みから解きほぐす』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

hamachan先生が過去にものされた2冊の新書(『新しい労働社会』『日本の雇用と労働法』)をもとに若年雇用に特化して詳述した本−ということになるでしょうか。第1章で「就職」型と「入社」型について紙幅を割いて整理されていることが奏功し、全体にわかりやすい本に仕上がっていると思います。
ただまあきっとそういう反応になっているだろうなと思ってウェブ上をざっと見てみたところ案の定だったのですが、この本を若者、特に職探しをする(典型的には就活に臨む)若者に推奨するというのはどうなんでしょう。もちろん、若者が知っておくことが望ましい知識はたいへん多く含まれていますし、若者に限らず、若年労働についてあれこれ言いたいならこのくらいのことは知っておけよなという内容の本でもあるのですが、著者の価値観にもとずく記述が随所に入り込んでいて若者がそこまで鵜呑みにすると危ないかなとも思うわけです(そういう人を増やしたいという意図であるならそれはそれで非常によくわかるわけですが)。