21世紀政策研究所『新しい雇用社会のビジョンを描く』

21世紀政策研究所主任研究員の細川浩昭さんから(だと思う)、21世紀政策研究所新書『新しい雇用社会のビジョンを描く―競争力と安定:企業と働く人の共生を目指して』をご恵投いただきました。ありがとうございます。ご承知のとおり21世紀政策研究所経団連シンクタンクです。
昨年12月に開催されたシンポジウムの記録とのことで、細川さんのほかに佐藤博樹先生、阿部正浩先生、大内伸哉先生、駒村康平先生という豪華メンバーの報告があり、それに連合の逢見副事務局長と日本アイ・ビー・エムの坪田専務が加わったパネルが続いています。
シンポジウムの概況は以下にあります。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/journal/times/2011/0101/10.html
内容は雇用形態の多様化がメインで、シンポジウムの記録なので必ずしもすべての論点が網羅されているわけではなく、かつ経団連のシンポジウムなので規制緩和色が強い感はありますが、現下の問題意識と方向性がコンパクトに集約された読みやすい資料になっていると思います。
(4月14日追記)21世紀政策研究所のサイトに電子ブックが掲載されました。全文が読めます。
http://www.21ppi.org/pocket/data/vol10/index.html

野田進『労働紛争解決ファイル』

労働開発研究会の末永さんから(だと思う)、野田進先生のご著書『労働紛争解決ファイル〜実践から理論へ〜』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

労働紛争解決ファイル~実践から理論へ~

労働紛争解決ファイル~実践から理論へ~

第1章が野田先生ご自身が労委委員として経験されたあっせんの事例集とそれにもとづく制度評価と問題意識、第2章が諸外国の紛争解決実務者のヒヤリングによる海外事情の紹介、第3章がわが国の労働審判と労委の個別紛争あっせんの実情と問題点の整理にあてられ、終章では今後の展望として労働委員会制度の改革が提示されています。
野田先生は昨年開催された日本労働法学会の名古屋大会でも東アジアの個別労使紛争処理に関する大シンポを仕切っておられました。私としては、その際にも少し書いた(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100517#p3)ように、個別紛争はまずは職場の労使で解決がはかられることが望ましく、わが国でカウントされる労使紛争が他国より少ないのは企業内解決の努力がはらわれているからだ(いやもちろん中にはとんでもない仕打ちに泣き寝入りしている労働者も多々いるとは思いますが)と考えており、野田先生のご意見とはやや異なる見解を持っているのですが、とはいえこの本が紹介している個別事例や国際比較は非常に興味深く、制度改革の方向性もありうる考え方かなあとも思いました。じっくり読んでみたい本です。