ビジネスガイド7月号

 (株)日本法令様から、『ビジネスガイド』7月号(通巻947号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

 今号の特集は「注目最高裁判決」と「使える助成金」の二本立てで、前者は最近注目を集めた共同組合グローブ事件と滋賀県社会福祉協議会事件の最高裁判決が取り上げられ、経営法曹の向井蘭先生が解説しておられます。実は今号では大内伸哉先生のロングラン連載「キーワードからみた労働法」も「事業場外みなし労働時間制」をとりあげ、協同組合グローブ事件を論じておられます。
 協同組合グローブ事件では、大内先生も指摘されておられるとおり「労働時間を算定し難いとき」についての新たな解釈基準が示されるのではないかとの期待もありましたが、残念ながら今回そこまでの到達はありませんでした。とはいえ、向井先生が強調しておられるとおり、従来の阪急トラベルサポート事件の枠組みに従った地裁・高裁判決が覆ったことの意義は大きいでしょう。まあ、実務的には、これも向井先生が言われるように(大意)残業代を払いたくないからみなし、というのはダメとしたもんだというのが最大の教訓なのかもしれません。
 滋賀県社会福祉協議会事件については、「ジョブ型」雇用社会の新たな判断、みたいな報道もされていたように思いますが、でまあこのケースについては(職種限定の合意があったので)ジョブ型と言ってよろしかろうとも思うところ、ということは職種変更ではなく解雇ならよかったのか?というのが反射的に想起されるわけです(当時Twitterでこう書いた)。
 向井先生もこの点に関しては「…別の職種変更について打診を行えば足り…転換を拒否…金銭提示による退職の交渉となり、決裂すれば整理解雇が可能」と述べられていますね。
 なお八代尚宏先生の連載「経済学で考える人事労務社会保障」は「令和6年度年金財政検証の課題」で、4月16日の社会保障審議会年金部会に提出された「令和6年度財政検証の基本的枠組み、オプション試算(案)について」をもとに、現状の政府の検討が年金支給開始年齢の引き上げや第3種被保険者制度の廃止といった本来必要な検討事項に踏み込めていないことを厳しく批判しておられます。