[労使関係]最賃目安小委員会、ようやく結論

もめにもめて結論が大幅にずれこんだ今年の最低賃金ですが、ようやく目安小委員会の結論が出ました。平均15円と二桁引き上げが継続、しかも全都道府県で10円以上ということになったようですが…日経新聞から。

 2010年度の最低賃金の引き上げ幅の目安が5日、平均15円に決まった。前年度の引き上げ実績の10円を上回り、初めて全都道府県で10円以上の引き上げ幅を示した。最低賃金の上昇は相対的に賃金が低い中小・零細の小売りや流通業への影響が大きく、経営側の反発は強い。今後の焦点は都道府県単位の労使協議に移るが、地方の景気は厳しく、今回の目安が反映されるかは不透明だ。

 政府は6月の雇用戦略対話で「20年までに全国最低800円、全国平均1000円」との目標を掲げた。今回の目安はこの数値目標を考慮しながら出した。最低賃金が上がれば低所得者層の暮らしにプラスに働くという利点がある。一方、デフレから抜け出せないなかでは経営を圧迫し、かえって雇用を不安定にするとの懸念も強い。
 厚生労働省によると、時給800円未満で働く人は08年時点で255万人と、全労働者(従業員5人以上の企業)の8.8%を占める。業種別で最も多いのは「飲食料品小売業」で約51万人。次いで「一般飲食店」が約23万5千人、「流通など事業サービス業」が約20万8千人と続く。地域別にみると沖縄県では全労働者の32.4%、宮崎県では24.2%が800円未満だ。

 今後は同審議会が示した目安をもとに、都道府県の審議会で協議が始まる。09年度に10円以上の引き上げを実施したのはわずか6都道府県。34県の上げ幅は1〜3円で、新潟と岐阜の2県は引き上げを見送った。今回、全都道府県で10円以上上げられるかどうかは不透明だ。地域経済への影響と低所得者への配慮をどのように考え、着地点を見いだしていくか。調整は難航も予想される。
(平成22年8月6日付日本経済新聞朝刊から)

ちなみに都道府県別の上げ幅は、最高が生活保護との乖離が大きい東京と神奈川の30円で、以下京都15円、埼玉と大阪14円、北海道13円、他の41県が10円とのことです。
さて、記事によると連合の南雲弘行事務局長は「賃金が低い地域で初の二桁の上げ幅になった意義は大きい」との談話を出したそうですが、本当に10円がどれだけ実現するかはまだ微妙です。都道府県の審議会メンバーは、中央のそれに較べてより経営や生活の実感を強く持っているはずで、「10円は無理」という判断に至るケースも出そうだからです。中小企業の生産性向上支援といっても、都道府県レベルでできることには限界があるでしょう。中央でもだいぶ遅れましたが、地方でさらに遅れることになるかもしれません。
そもそも、連合や民主党最低賃金の決定に生計費をもっと重視せよと主張する一方で、生計費に地域差があるにもかかわらず全国一律800円という目標を設定したのが無理があるわけで、経済が成長して生産性が上がっていればともかく、そうではない状況ではこうした矛盾が出てくるのも当然と申せましょう。
繰り返し書いていますが、生産性向上→労働条件改善→最低賃金引き上げというのが正常な手順というものであり、その認識に立った議論をお願いしたいものです。