テキスト三題

「キャリアデザインマガジン」で書評をやっているせいか、時折、私のような者にまで著書をご恵投くださる方がいらっしゃいます。私ごときにまことに恐れ多くももったいない話ではあるのですが、ありがとうございます。
これまでは分不相応でもあり、お送りいただいたことはブログには掲載せず、評を書いた段階で転載していたのですが、教科書やハウツー本は評をしないことも多く、また先日お会いしたある著者の方から「ブログに載るとamazonの売上が伸びる」とのお話をいただいたこともあり、今後はご紹介させていただくことにしようと思います。
ということで、最近頂戴した、いずれも定評ある教科書の改訂版を3冊ご紹介したいと思います。労働市場も労使関係も人事労務管理も変転の速く激しいこんにち、時宜を得た改訂版がタイムリーに刊行されることは喜ばしいことです。

菅野和夫『労働法第九版』

労働法 第9版 (法律学講座双書)

労働法 第9版 (法律学講座双書)

私が人事屋の世界に身を投じた(大仰)のは1989年ですが、その当初『第二版』で勉強したことを改訂版をお送りいただくたびに懐かしく思い出します。自宅の書棚には『第三版』以降の緑色の背表紙が並んでおります。
hamachan先生のブログでも言及されていますが、今回の改訂では団体的労使関係法の部分の充実が目立ち、序文でも中労委事務局への謝辞が記されています。先日、菅野門下の某先生たちとお会いした際にも「中労委でのご経験が学説にも反映されているのだろうか…」などと話が盛り上がりました。

水町勇一郎『労働法第3版』

労働法 第3版

労働法 第3版

『雇用社会の法』『新・雇用社会の法』の改訂版が望みにくい状況の中では、類書として存在価値の高いテキストだと思います。身近に感じやすそうな事例設問をふんだんに挿入し、文献の引用なども豊富で、今日的な論点などもカバーしていて、複雑に入り組んだ労働法を解きほぐし、「法学の教科書」の無味乾燥なイメージとはずいぶん異なるものになっています。教科書というにはやや著者の主張が出すぎている感もなきにしもあらずですが…。
現場の実務家としては菅野・安西・野川編『実践・変化する雇用社会と法』の新版も欲しいところですが…と我が田に水を引いてみる(笑)。
実践・変化する雇用社会と法

実践・変化する雇用社会と法

今野浩一郎佐藤博樹『人事管理入門第二版』

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

こちらは7年ぶりの全面改訂です。章立てはほとんど変わっていないのですが、内容はけっこう手を入れられています。実践的な人事管理をじっくり学びたい人事担当者には最良のテキストだろうと思います(手っ取り早く学びたい向きには佐藤・藤村・八代『新しい人事労務管理第3版』有斐閣アルマがおすすめです)。これに佐藤・藤村・八代『マテリアル人事労務管理新版』有斐閣(これもそろそろ第三版がほしいかも)をセットすればまずまず万全という感じで、僭越ながら佐藤博樹先生がテキストライターとしてもまことに優れておられることが伺われます。
新しい人事労務管理 第3版 (有斐閣アルマ)

新しい人事労務管理 第3版 (有斐閣アルマ)

マテリアル人事労務管理

マテリアル人事労務管理