まず「子育てのストレス」です。出所は「第1回妊娠出産子育て基本調査報告書」Benesse次世代育成研究所(2007)、調査対象は第1子を持つ、または妊娠中の妻・夫 4,479名ということですので、調査自体は最新というわけではありません。「育児期の妻・夫に、乳幼児のいる生活の中でストレスになり得る12項目について経験の有無と、ストレスの度合いをたずねた調査結果から、妻のストレスについて10項目を取り上げてみた」というものです。仕事との関係の選択肢がないようなので、働いていないことを前提にしているのかもしれませんが…。
経験したことがある | イライラした | イライラ/経験 | |
あなたがおもちゃや散らかっているものを片付け続けている | 93.0% | 24.5% | 26.4% |
子どもに遊んでとせがまれる | 80.4% | 8.3% | 10.3% |
自分のための時間を確保するのが難しい | 74.7% | 41.2% | 55.2% |
子どもに文句や不平を言われたり、駄々をこねられたりする | 66.4% | 37.1% | 56.0% |
夫婦2人のための時間を確保するのが難しい | 63.5% | 13.2% | 20.8% |
大勢の人がいるような公共の場で子どもの扱いに困る | 58.4% | 27.6% | 47.2% |
自分1人で過ごすスペースを確保するのが難しい | 53.1% | 21.2% | 40.0% |
夜泣きがひどい | 39.4% | 23.8% | 60.5% |
住居の間取りの使い勝手が悪く、家事や育児がしづらい | 31.6% | 17.5% | 55.3% |
家の中に子どもが遊べるスペースがあまりなくて苦労する | 25.1% | 10.3% | 40.9% |
「経験したことがある」の多い順に並べていますが、経験した人が多い項目が必ずしもイライラした人が多いかというと、そうでもありません。「子どもに遊んでとせがまれる」は、経験した人は10項目の中で2番めに多いのですが、イライラした人の比率が非常に低く、イライラした人は一番少なくなっています。その逆が「夜泣きがひどい」で、経験した人は3番めに少ないものの経験者がイライラする比率は最も高く、結果イライラでは5番めになっています。
で、イライラが一番多いのは「自分のための時間を確保するのが難しい」で、やはり自由時間の少なさ、拘束度の高さがストレスの原因としては最大という結果が出ています。いっぽう、似て非なる?「夫婦2人のための時間を確保するのが難しい」は、経験した人の多さは「自分のための」と遜色ないにもかかわらず、経験者がイライラする比率は「子どもに遊んでとせがまれる」に続く低さで、結果イライラでは下から3番めにとどまっています。夫と二人の時間はいらないから一人になって解放されたいということだとすると、世の夫諸氏にはなかなか厳しい結果ではありますが、「自分のための時間」であれば夫と二人であっても差し支えないのであるとすれば、子育て期の夫は夫婦二人のときには妻に極力負担をかけないように心がけるべきということかもしれません。いずれにしても、少子化対策として「母親が自分のための時間が確保できるようにする」ということはかなり重要といえそうで、これは夫や家族が育児に協力することに加えて、容易に「自分のための時間が確保できるようにする」ための支援策、具体的には目的不問で利用時間(帯)の自由度が高い、安価・良質な保育サービスの供給が重要と申せましょう。特に「目的不問」がけっこう大切で、行政はじめ世間では、妙に「働くための時間が確保できるようにする」ことが重視されていて、働くための育児サービスの供給にはそれなりに取り組まれていますが、働いているか否かにかかわらず、自分のための時間、ありていに言えば遊ぶ時間(に限りませんが)だって誰しもほしいでしょう。人間心理として「自分が遊ぶために子どもを預けたい」とはなかなか言いにくく、表面には出にくいでしょうが、現実にはそうしたニーズも大きいのではないでしょうか。